フルートの高音域を小さい音量で吹くのは大変難しい事です。特にオーケストラではしばしばその技術を求められます。ここでは、そんな緊張の場面でも唇をなるべく酷使せず、効率よく弱奏する方法について考えます。
「第九」のフルートは弱奏の嵐…
いろいろな交響曲があって、技術的にもっと難しい曲もありますが、第九の難しさはまた違うと感じます。耳が聞こえない中にも関わらず緻密に楽譜が書かれていて、全く気が抜けません。そして、割とオケのフルートには50小節とかお休みがあったりするのに、第九の1stは結構吹きっぱなしで体力的にもきついです。何が辛いかというと、フォルテではなくピアノです。しかも高音域をピアノやピアニッシモで吹かなければならない箇所がかなりあります。大抵オーボエやクラリネットとオクターブユニゾンだったりするので、音程にも細心の注意を払わなければならないし・・・神経がすり減ります。
人生で初めて第九の1stを吹いたのが大学3年生の時でしたが、その時はまだまだ無理をして吹いていたので、 1回通すと口周りがヘロヘロになっていました。
しかし弱奏にもちゃんとコツがあって、それがわかった今では体力の消耗もかなり抑えられているかと。ヒントはピッコロの演奏の仕方でした。
小さい音を出すなら、まず息を減らそう
例えばピッコロなら息の量は半分
フルートとピッコロでは歌口の穴の大きさが違いますね。ピッコロの歌口にフルートを吹くときと同じ量の息を吹き付けたらどうなるでしょう・・・? 息は多すぎて上手く鳴らなかったり、唇がブーブー言ったりした経験、多くの人にあるのではないでしょうか。その原因は、フルートを吹く息のままピッコロを吹いてしまっているからです。
ピッコロが必要とする息の量は基本的にフルートの半分くらいです。ピッコロを吹いた後にフルートを吹くと、口の周りの筋肉が疲れていて言うことを聞かない、なんてことがよくあります。それは許容オーバーの息の量を唇で制御しようとするため、無駄な力を使ってしまっているからです。
フルートで小さな音を出す時も同じ!
フルートで小さな音を出す方法はピッコロを吹く時と共通しています。しかし多くの人は、小さく吹こうとして先にアパチュア(唇の間の穴)を小さくしてしまう失敗をしてしまいがちです。そうなってしまうと唇に負荷がかかりすぎたり、音が潰れてしまったり、雑音が増えてしまったりと、良い結果になりません。
息を減らすとは?
でも、息を減らすってどうするの?とよく聞かれます。肺にたまった息は、放っておくと外に出て行きます。何も制御しなければ息はどんどん逃げていきます。でも、「人間は息を止める」という技を持っていますね?どうやって止めているのでしょう・・・ただし声帯を閉じないことがポイントです。いつでも声が出せる状態のまま息を止めようとした時、どこかの筋肉が働くはずなのです。
息の量を唇の閉じ具合でコントロールする事も不可能ではありませんが、そのような制御の仕方では唇周辺の筋肉を酷使することになります。子供のうちはそれでも案外大丈夫なのですが(一晩寝れば回復するので・・・)、大人になると無理が利かなくなります。フルートで小さな音を吹かなければならない時も、いかにして息を減らすか、つまりいかに「吐かない」ようにするかということを考えてみましょう。
【フルート的】息の支え
この息を吐かないコントロールがフルートにおける息の「支え」ということになるのだろうと思います。息が速く出て行かないように、ゆっくり時間をかけて使う…恐らく他の管楽器とは違う、フルート特有の息遣いです。
追記:この記事を最初に書いた2014年当時、支えはお腹でするものと言われて育っていましたし、そうだろうと思っていました。しかし色々と研究する中で、私自身はお腹を意識するとあまり具合が良くないらしい事が最近分かってきました。仮説ですが、生まれつきの身体の使い方によって、お腹を意識した方が良い人と、そうでない人がいるのではないかと…。
ということで、ここでは具体的にどこで息の量をコントロールするか(支えるか)に関しては、人によって違うので言及は避けておきます。小さな声でお話が出来る方なら小さい音も出せるはずなので、各々の身体をよく観察して探ってみてください。
まとめ
小さい音を出したいなら唇に頼らずに、息が速く出ていかないように支えてあげよう
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