むかーし、フルートは唇が薄くないと吹けないという噂のようなものがありましたが、そんな事はありません!唇が厚いから上手く吹けないんじゃないか…とお悩みの方に是非読んで頂きたいです。
フルートを当てる時の基本的な考え方
ある日、とある中高一貫校のフルートパート指導。中学生と高校生6人のレッスンでした。「フルートを響かせる」ということを体得してもらうには、いろいろなアプローチをしなければなりません。その内の一つ、楽器(リッププレート)の当て方ももちろん大事な要素です。
今までレッスンで関わった多くの人が、「唇(アパチュア)を歌口に合わせよう」としていました。かつての私もその一人。そのような状態の人は、アパチュアから歌口までの距離が遠くなっている場合が殆どです。音色がまとまらないのを上唇を被せることで凌ごうとして、無駄な力を使ってしまい、最悪の場合はかつての私のように調子を崩してしまいます 。
どの楽器を構えるときでも「楽器に自分を合わせない」で「楽器を自分に合わせる」、これが基本です。フルートは息を無理に下に向けたり上に向けたりしなくても、正面に吹くつもりで吹けば音は出ます。そして、そのためには自分の息が適度な距離で歌口に当たるようにセットする必要があります。2オクターブ目を吹くのに唇にかなりのストレスがあったり、たくさんの息を必要としている場合は、息を歌口に向かって集めようとしてしまい、自由を失っているのかもしれません。
「唇に厚みのある人にフルートは向いていない」は間違い!
日本人の唇は比較的厚みがあって、それがちょっとした問題にはなります。唇の息の出口から歌口のエッジまでの距離は、遠すぎず近すぎずがよいのですが、唇に厚みがあると遠くなってしまうのです。
しかし、厚いから吹けないなんて事は決してありません!私の唇も薄い方ではないので、当て方に関しては学生のころ色々と悩みました。しかし、歌口の当て方を工夫すればどんな唇でも問題なく吹けるようになります。唇の厚みが問題なのではなくて、当てる位置やそのプロセスがポイントなのです。
フルートの当て方には大体2通りある
フルートの歌口を唇に当てる方法は大きく分けて2つあります。一つは楽器を内側にして歌口を両唇で塞ぐようにしてから、くるっと外向きにするという方法。もう一つは、楽器を一旦外向きにしてから下唇の下の方に当てて、自分の方に向ける方法です。
しかし、「内→外」は唇厚めの民には向かない
「内→外」の当て方は、歌口と唇の位置関係の確認がしやすいので、初心者の方を始め多くの方に見られます。この方法で上手くいっているのであれば問題ありませんが、経験上、唇が厚めの方にはあまり向いていないように思います。その手順だと下唇に歌口が乗ってしまい、息の出口とエッジまでが遠くなってしまいます。ですので、いかにしてその距離を縮めるのかというのが問題になります。
唇の厚みを攻略するポイント2つ
1.顎のくぼみを上手に活用する
歌口の手前のエッジの下側は、緩やかなカーブになっています。それを自分の顎のくぼみにフィットさせましょう。こうすることで、息の出口からエッジまでの前後の距離が縮まります。
2.下唇を適度に「収納」する
歌口を唇に当てる方法にコツが要ります。先ほどフルートの当て方には大きく2通りあるというお話をしましたが、前者の「楽器を内側に向けて外に戻す」のではなく後者の方法をしてみましょう。つまり、楽器を外側に向けてから、内側(吹ける角度)に戻す。楽器を外側に向けた際に顎のくぼみにリッププレートのカーブをフィットさせ、手前のエッジを下唇と皮膚の境目くらいに感じるように当ててから、角度を戻します。 こうすると、上唇から歌口エッヂまでの距離を適切に縮める事が可能になります。
歌口の手前のエッジを下唇のどの辺りに当てるかは勿論個人差があります。私は下唇と皮膚の境目よりも少し上にエッジが来るようにして、楽器の角度を手前に戻す時に下唇の端をちょっとだけ巻き込むようにしています。厚みがある人ほど上にした方が良いかもしれません。 鏡を見ながら音をよく聴いて、自分のベストポジションを探しましょう。
良いポジションになったかどうかの判断ポイント
- 息を下に向けなくても、まっすぐ吹けば音が出る
- オクターブの行き来が無理なく出来る(2オクターブ目を遠く感じない)
- 音がバサバサしなくなる
- 音が細くならず響きが豊かになる
- ピッチが良くなる
- 唇で頑張らなくても全音域が鳴る
- アンブシュアを作ろうとしなくても、ただフルートを当てれば音が出る!
まとめ
これらの方法で、息の出口から歌口までの距離を縮めることが出来るはずです。そうしてうまく行けば、今まで息を上唇でまとめようと必死になっていたのが嘘のように、ただまっすぐ吹けば音が出るという状態になります。下に向かって息を吹き付ける癖のある人は、この当て方をした場合には正面に息を吹くつもりで吹きましょう。顎と下唇の関係で、息は勝手に良い方向に行くようになります。
実際のレッスンでは唇の様子を見ながら、私が手で楽器の位置を調整して吹いてもらいます。初心者で楽器を始める方は出来るだけ対面レッスンで楽器の当て方を見てもらうのが良いと思いますが、唇の厚みでお困りでしたら参考にしてみてください!
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