【フルート・ピッコロ】ウォーミングアップでその日のコンディションが決まる

 以前ウォーミングアップを敢えてしないという記事を書きました。

 それとは矛盾するように思われるかもしれませんが、この記事でも言いたいことは同じです。経験者の皆さまに多い、アンブシュアに関わるいろいろな不調は、何かが足りないというより「〇〇しすぎ」が原因である事が多いです。

 この記事では、私が普段楽器ケースを開けてからどんな事に気をつけて吹いているかについて書いてみます。テーマは「いかに余計なことをしないか」です。

目次

吹き始めの唇の心もとなさを大事にする

 1日のうちで初めて楽器を吹いた時に、音はバサバサ、アンブシュアも定まらなくて心もとない感じがあると思います。ですが、この時の余計な力が入っていないアンブシュアで一日中吹ける事が理想だと思っています。

 ウォーミングアップをして、必要な基礎練習をしていくうちに、眠っていた筋肉が目覚めてきて音もしっかりしてくると思いますが、それと同時に唇の柔軟性を失っていないでしょうか?

 以前「音出し」に時間をかけないようにしようという趣旨の内容を書きました。

 作り込みすぎるとブレスの度にアンブシュアを作ろうとしなくてはならず、タンギングも決まりにくくなり、あまり良い影響が無いというのが実体験としてあります。なので、とにかく吹き始めの唇の状態を維持することを最大限に意識して、この後の基礎練習を行っています。

アンブシュアは作るものではなく、唇を閉じて息を吐いたら勝手に完成します!

低音域をじっくり吹く

 たまたま執筆中の今は木管のフルートを借りて吹いているので、最初から高音域を鳴らさないでねと言われていまして・・・(笑)いきなり高い音を吹くと楽器がびっくりしてしまうとのこと。金属のフルートならあまり関係ないと思います。

 ただし素材に関係なく、低音域が良い響きで吹けているかどうかが、その上の音域の質を決めることは間違いありません。無理のないアンブシュアで、息を吐きすぎるでもケチりすぎるでもなく、なるべく少ない息で効率よく低音が鳴るように研究してみましょう。

低音域の質が全音域の質を決める!

低音域から中音域に響きを伝える

 低音域が落ち着いたら、その響きを中音域に伝えていく過程に入ります。一番コンディションが分かりやすいのは、オクターブの跳躍です。1オクターブ目の音から2オクターブ目の音へ、スラーで上がってみます。思い通りのレガートで、上下の音質に差がなくどちらも良い音で吹けているかを確認するようにしています。

 普段は生徒さんのレッスンでも、ソノリテの練習の応用バージョン(オクターブの跳躍を含めた練習)を取り入れています。

中音域から高音域までやわらかい音で吹く

 フルートの難しさは上のオクターブに行くほど上がっていきます。特に高音域(3オクターブ目)に入ると、より息のスピードが必要になります。始めたばかりの頃はなかなか効率良く鳴らせないので、たくさんの息が必要です。しかし、できるだけ息を浪費せずに高音域が吹けるようにしていくことが大切なので、中音域を吹く時より息の量をなるべく増やさないように練習しなければなりません。吹き始めの時から、中音域〜高音域にかけて息の量をなるべく変えずに、柔らかい音色で上がっていけるように意識するようにしています。

中音域と高音域を同じ息の量で吹く

発音(タンギング)の練習をする

 管楽器の世界ではいわゆるロングトーンが重要とされていますが、発音・タンギングの美しさを追求することの方がとても大切ではないかと思います。なぜなら、楽器の違いや吹き手の違いは発音の瞬間に最も現われるからです。美しく発音ができれば、それを維持するだけなので、ロングトーンを頑張るよりも発音の練習に時間を割いたほうが効率が良いのです。

 タンギングをするばかりではコツが掴みにくいので、あえてタンギングをしないで吹く練習をするなどして、日々美しい発音を追い求めています。

ロングトーン<タンギング

音階練習で仕上げる

 音階練習はテクニックの練習と思われがちですし、私自身もそういうつもりでしていましたが、大人になって後悔しています・・・。音階練習こそ、音色、発音、息づかい、フレージングなど、あらゆる技術の集合体です。やり方によっては、音階練習によってさまざまな音楽スタイルを学ぶこともできます。

 曲の練習に移る前に、ここまでのウォームアップを総合するつもりで音階練習を取り入れてみてください。必ずしも長い時間をかける必要はありません。音階練習が義務的になったり、苦痛になったり、続けることが重荷になる方が良くありません。短い時間でもいいので、質の良い音階練習の時間を取るようにしましょう。

音階練習の際、最も気をつけているのは「その日吹き始めた時のアンブシュアの状態」を維持できているかどうか。ちょっとでも変な力みを見つけたら、それを無くすように意識をします。

音階練習は総合練習!

まとめ

 学生の頃は、唇の周りに必要な筋肉を鍛えるような意識で吹いていました。勿論全身ゆるゆるでは吹けませんが、唇の周りの筋肉を意識するような練習の仕方をする方が私には合いませんでした。なので、現在は余計な筋肉を使わず、なるべくナチュラルな状態を維持することを最優先にしたウォームアップを心がけています。

現在の状況を変えたいという場合は、考え方や意識の方向性を変えてみることがヒントにつながるかもしれません。

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