普段なかなかトリルの練習をする時間を取らない方が多いと思います。トリルをメトロノームで丁寧に練習することによって、指のコントロール力が大幅に向上します!毎日やらなくても良いのですが経験しておくととても良いので、オススメのテキストや練習方法について書きたいと思います。
トリルの練習による効果
曲中のトリルがコントロールしやすくなる
これは無論ですが、曲中に長いトリルが出てきた時のコントロールの練習になります。例えばモーツァルトなど、古典派の音楽には大切な時にトリルが書かれています。また多くの場合は後打音といって、トリルの最後に締めの音を吹かねばならないのですが、トリルをしながら後打音と次の小節の最初の音符のタイミングを図るのがなかなかに難しかったりします。
トリルをすることそのものがスムーズでないと、後打音まで思ったタイミングで吹く事ができませんので、トリルに慣れておくためにも練習の時間を取ることをオススメします。
指の動かし方に無駄がなくなる
トリルの練習による効果の本当に大切な部分はここから!トリルは指の動きを必要最小限にしないと速くできませんので、無駄のない動きを意識した練習ができます。基本的にはトリル用の運指を使用しますが、特にトリルキィのコントロールはいい加減になりがち。動かす指が少なく速く動かすのが簡単なだけに、トリルの2つの音の長さを均一に演奏するのが実は大変難しいのです。
左手の親指のトリルも苦手な学生さんが多いです。左手の親指で楽器を支えてしまっていると、離した時に楽器が不安定になるのでトリルしにくくなります。また他の指にも握る力が入ってしまうと親指も離しづらくなるので、楽器の最適な支え方やキィを押さえる指の無駄な力を無くしていくためにも、トリルの練習は有益なのです。
正確に思った通りのタイミングで指を動かすトレーニングになる
上記のポイントと共通する部分もありますが、無駄のない動きは正確なコントロールにつながります。実際の曲中で長いトリルを演奏する時、機械的に同じスピード・毎回同じ回数にはしません。しかし回数を決めてコントロールする練習をしておくと、曲のいろいろな場面で指が暴走するのを防ぐ事ができるようになります。
例えば低音域・中音域「ソ〜ラ」のトリルは左手の薬指の上げ下げによって演奏しますが、このトリルも嫌な組み合わせですよね(しかもよく出てくる・・・)。速く動かそうにも言うことを聞いてくれず、さらに長い時間だと結構しんどいです。
改善のためにはやはり楽器の支え方や、指の無駄な力を無くす工夫が必要ですので、是非研究して欲しいところです。
しかもこういう動かしにくい指に限って、大事な場面で転ぶんです(速く動いてしまう)・・・。原因は上げる・下げるタイミングを操れていないことです。指を1本だけ上げ下げすることは、簡単そうに見えて実は奥深い動きなのです。こういった事をきちんとコントロールする癖をつけておくだけで、速いパッセージに出会っても焦らずに吹けるようになっていきます。
おすすめのテキスト
やっぱり「タファネル&ゴーベール」
手元にお持ちのテキストに載っていれば新しいものを買う必要はありませんが、もし技術的な内容に特化したものをお持ちでないのであれば、「タファネル&ゴーベール 17のメカニズム 日課大練習」は是非ご購入ください!
筆者が生学生の頃は高価なLuduc版か、内容充実のシンフォニア版の2択でした。シンフォニア版は植村先生の解説が丁寧で大変勉強になりますので、読み物としても有益です。ただ練習のしやすさでいうと、最近出版された酒井先生による音楽之友社版がオススメです。
今までのテキストだと途中で楽譜をめくる必要があったのですが、長い練習課題は楽譜が折りたたみになっていて譜めくりが不要!これはかなりのストレス減です。
「タファネル&ゴーベール」のトリルのページは最終第17課にあります。半音と全音のトリルが全音域に渡って書かれています。
練習のポイント
必ずメトロノームを使いましょう
メトロノームを使わないとこの練習の効果はほぼゼロと言えます。フルートの音楽は、無伴奏曲をのぞくと、常にピアノの伴奏や他の管楽器奏者とのアンサンブルで成立します。つまり日常的に他者のテンポに合わせたり、合わせてもらったりします。一人で勝手に好きなように吹くなら良いのですが、他者とのアンサンブルでは一つ一つの音を演奏できる時間は限られます。ですので狙ったタイミングで楽器の音を操る事ができないと、人とのアンサンブルは成立しません。
メトロノームによって与えられたテンポの中で、出来るだけ正確にブレることなくトリルができているか、自分の厳しい耳でチェックしながら行いましょう。
- 上下の音の長さは均一でしょうか?
- 上下の音の質は良いでしょうか?特にトリル用の運指の場合も、なるべく音質の差が出ないように気をつけたいところ
- 後打音まで丁寧に吹けていますか?
技術的な練習の意義として、難しいパッセージを演奏しやすくする事は
勿論ですが、良いアンサンブルをするためという側面の方が大切ではないかと思っています。
指の無駄のない動きに最大限注意を払いましょう
指を素早く動かすには、あらゆる無駄をなくすことが大切です。トリルの練習をすることで、楽器の支え方やキィを叩く癖などに改善が見込めます。
- 指を離した時にキィから高く上がっていませんか?
- キィを叩きつけていませんか?
- トリルをしていない指で楽器を握りしめていませんか?
- 左手の親指、右手の小指で楽器を支えていませんか?これらの指でのトリルはスムーズでしょうか?
自分の演奏を修正できる無理のないテンポで練習しましょう
トリルは速く演奏できた方が良いですが、ここではどちらかというと正確に指をコントロール出来ているかのチェックの方が大切なので、自分の演奏を自分でジャッジ出来ないスピードでは練習しないようにしましょう。上下の音の長さや音質、指の動きや力みなど、これらのことを自分で客観的に観察しながら吹くのは大変なことです。
私はメトロノームを80くらいにセットして練習する事が多いですが、60でも50でも良いと思います。ムラやブレに気がつかないで爆速で吹くよりも、丁寧に練習してムラやブレを修正できた方が確実に上達しますよ!
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