教室では心置きなく思いっきり演奏できますが、自宅ではなかなか難しい・・・という声をちょくちょくお聞きします。住宅密集地や集合住宅にお住まいで、フルートを吹きたいけれど音が心配・・・という方もいらっしゃると思います。教室はもちろん防音工事をしておりますが、趣味のためにご自宅の一室を工事するのは費用面でも大変ですよね。
この記事では、
- フルートの音がどれくらいの音量なのか
- 音を気にしてコソコソ吹くのはNG!
- 簡単にできる音漏れ対策
- 簡易防音室、外部の練習場所
についてお話しします。
フルートの音量と音の特徴
フルートの音量は地下鉄レベル
フルートの音量は85〜105dB、地下鉄に乗っている時の音に相当するそうです。
ただ楽器の練習の音対策を考える際には、その楽器の音の特徴や音域、部屋の環境なども含めて考えていくことが必要だと思いますし、ずーーーっとその音量レベルで音を出し続けるわけではないので、あくまで目安です。
フルートは高音域で、倍音が少ない素朴な音
音には低音の方が遠くまで届きやすいという特性があります。フルートの音域は多くの楽器の中でも高いため、ピアノの低音やベースギターのような音の伝わり方はしません(昔防音室付きのアパートに住んでいた頃、夜中に上の階から「ズーン、ズーン・・・」とベースの音が響いてくることがありました・・・)。そういう意味では、家の中で吹いてもそこまで騒音にはなりにくいと思います。
そして音の特性として、フルートは「倍音」が少ない音、つまり素朴な音の楽器です。「倍音」というのは、耳にははっきり聞こえないけれど実は同時に鳴っているたくさんの音たちのことで、含まれる倍音の数やそのバランスは楽器によって異なります。同じ木管楽器でもクラリネットの方が遥かに多くの倍音を同時に鳴らすことができるそうです。
倍音が豊かな音ははっきり・大きく聞こえやすいため、吹奏楽のなかで倍音の多い楽器に囲まれたフルートは非力・・・。ですが、それは同時にあまりうるさくないということでもあります。
ちなみに金管楽器の音はジェット機レベルとのことですが、これも楽器の種類によって聴こえ方が全然ちがいます。実は主人がトロンボーン吹きで家には多種の金管楽器がそろっていますが、やはりトランペット→トロンボーン→チューバと、音域が下がってくるに従って外への音漏れが大きくなる傾向です(チューバを吹くと、防音工事をした部屋でも外まで聞こえてきます)。
近隣のお家にはどう聞こえるのか?
集合住宅の場合、フルートの音は意外と下の階よりも上の階へ聞こえやすい印象です。
住宅街ですと、隣近所よりもっと遠くの意外なところで音が聞こえたりということもあるようです。私が実家で練習していた時に母が外から帰ってきて、「川の向こうで聞こえた」と言われたことがあります。家々の外壁で反響して、思わぬところへ音が飛んでいました。聞こえたとはいえ、「どこかで何か演奏しているなー」レベルです。
気を付けたいのは高音域の練習が続く時。まだあまり上手く吹けない時期に高音域を吹こうとすると、どうしても必要以上に息を使う吹き方になってしまうため、大きな音になってしまいがちです。人は高い音により敏感に反応するので、長時間聞かされているとあまり心地良くないかもしれません・・・。
みんなはどうしてる?
案外普通におうちで吹いている人が多数
生徒さんにお聞きすると、普通にご自宅で吹いている方が多い印象です(ただし毎日ではなく週に何日か、時間も日中に1時間前後)。ピアノやヴァイオリンなど、趣味として楽しむ方が多い楽器のなかでは比較的音量も小さいので、苦情が来た、なんてことは今までには聞いたことがないです。
マンションだった私も普通に吹いていた
私はフルートを始めた当初マンション住まいで、その後引越した別のマンションでは音楽大学の受験期を過ごしました。長い時間でなければ、電子ピアノやフルートを普通に家で練習していましたが、大学受験の頃はさすがに長時間の練習になるので、組み立て式の防音室(YAMAHAのアビテックス)を購入してもらってこもったりしていました。しかし半畳の空間で数時間吹くのはかなり酷だったため(夏は暑すぎる)、結局ドアを開けたまま吹いたり、ときどき外で練習室(近所の青少年会館は無料で利用できた)を借りた記憶があります。
音漏れを心配してコソコソ練習するのはNG!
周りへ配慮しながら、毎日小さい音で頑張って吹く・・・以前そんな生徒さんがいらっしゃいましたが、本当に頭が上がりません。コツコツ練習してくださるのは本当に嬉しいことです。
しかしながら、コソコソ吹くことが癖になってしまうとなかなか正しい息の使い方を習得できないので、アンブシュアに負荷をかける吹き方になりやすく、「高音がうまく出ない」などの悩みが長期間解決できないことも。
なので、エチケットとしてできる限りの音漏れ対策をして
「毎日じゃなくて良い!短時間で良い!でも吹く時はしっかり吹く!」
を基本にしていただくことをオススメしています。
基本の音対策
「窓・ドア閉め切り+日中にできるだけ短時間」が基本
音は空気を伝わっていきますから、練習中は窓を閉め切りドアも閉じるが基本。シャッターがある場合は閉めるとより防音効果が上がります。
また長時間聞こえてくるとストレスを与えてしまいやすいので、1時間以上の練習は要注意。早朝や夜間はもちろんNGです。夕方は各家庭で夕飯の支度などの音が出るので、意外と狙い目です。ご近所に小さな赤ちゃんがいる場合などは、お昼寝の妨げにならないように注意したいところです。
練習するお部屋の選び方
何部屋か練習場所の候補がある場合は、
- なるべく隣のお宅と接していない部屋
- 窓が少ない部屋
- 大きな道路に面した部屋
などがおすすめ。
また、クローゼットは衣類など音を吸うものがたくさんあり、窓もなく奥まった場所にあるので意外とよい練習場所との情報も・・・(夏は暑さに注意!)。
可能ならばご近所にも楽器を吹くことをお伝えしておく
私は今の一戸建てに住む際に教室を開く前提でしたので、ご近所への挨拶時に夫婦共に楽器奏者であることと「防音工事は入れていますが、気になることがあれば遠慮なく言ってくださいね」とお伝えしました。楽器可の物件の場合はルールを守っていれば特に必要はないと思いますが、そうでない場合(購入したマンションや戸建て)は、長いお付き合いですし良い関係を続けるためにも、そういったコニュニケーションも大切だと思います。
より効果的な対策
防音(遮音)カーテンをかける
私の教室でも使っていますが、防音性能の高いカーテンをかけるという方法があります。ニトリなどでも購入可能です。専用のものでなくても、厚みのあるものならある程度の吸音効果が見込めると思います。
カーペットを敷く
カーペットを敷くのもかなり効果があります。教室で使っているものは防音のカーペットですが、ラグ1枚敷くだけでも響き方が変わるはずです。教室のカーペットは以下のリンクのものです。
外で練習するのも手
公共施設(¥0〜)
私も学生時代によく使っていました。私が高校生の頃住んでいた神奈川県平塚市には青少年会館という施設があり、部屋が空いていれば音楽室を無料で使うことが出来ました。
ちなみに国分寺市の公民館は、団体登録がないと利用できず、個人での利用は出来ないとのこと。自治体によって異なりますので、お住まいの地域の公共施設を調べてみましょう。
公園(¥0)
近所に広い公園がある場合は、公園練習もひとつ。春や秋はちらほら吹いている人がいらっしゃいます。
ただしフルートは音が小さく、公園は室内で吹く時との響き方・聞こえ方が全く変わりますので、調子を崩している時には向いていないかもしれません。気分転換には◎蚊に注意です。
カラオケ(¥500前後〜/1時間)
公共施設の利用が難しい場合、次に利用しやすいのはカラオケです。1時間数百円で利用でき、ついでに好きな曲を歌って帰る…という楽しい過ごし方ができます。一般的に日中は安く、夜間になると値段が上がったりドリンクオーダーが必須になったりします。頻度が多いとなかなかの出費になるので、自宅での練習と併用し、ここぞという時(レッスン直前や、心置きなく吹きたい時など)にスポット的に利用すると良いかもしれません。
ただしカラオケによっては特殊な音響環境になっていて、わんわん響きすぎて自分の音が聞き取りづらかったり、なんだか上手く聞こえすぎたり…ということもあるので、聞こえ方には注意しましょう。
練習室(スタジオ)を借りる(¥1,000前後/1時間)
民間施設のスタジオを借りるのも一つの方法ですが、こちらはカラオケよりも環境が良い分、お値段は高めです。個人で頻繁に使うのは難しいですが、複数人でアンサンブルをする際には重宝します。
国分寺市周辺にもいくつかスタジオがありますよ。
車の中
車で練習しているという生徒さんも以前いらっしゃいました。私も吹いたことがありますが、意外と吹き心地は悪くないです。外にも音は漏れにくいので、どこかに出かけるついでにフルートも積み込み、空いた時間に練習するのもありです。
組み立て式の簡易防音室もあります
多少お金をかけても良い!という場合は、部屋の中に置ける組み立て式の簡易防音室も売られています。練習の頻度や続ける年数によっては、毎回カラオケや有料の練習室を利用するより、こういったものを導入する方が長期的には安上がりの可能性もあります。
フルートは最低半畳程度の広さがあれば吹くことができるので、以下にご紹介する簡易防音室ならば練習が可能です。昔はYAMAHAのアビテックス一択でもっともっと高くついたのですが(もちろん防音性能は素晴らしかったです)、これらは10万円前後とかなり購入しやすくなっています!大人が長く趣味で楽しむのでしたら、こういったものを取り入れるのも選択肢の一つです。
ご紹介しているものはいずれも完全防音ではなく、フルートの音がテレビの音程度になるイメージです。
CLASSIC PRO ( クラシックプロ ) / CQR300 簡易防音室 Sサイズ
ちなみに防音工事をすると…
私の教室は、入居の前に知り合いの工務店さんにお願いして防音工事をしていただきました。具体的には、防音扉への交換、外に面している壁と天井に厚み6センチの防音材をつけ、窓を二重にしています。
お値段はお友達価格で100万円ちょっとでした💸趣味で楽しむために施すには高額なので現実的ではありませんが、参考まで。
どうしてもの場合は、吹くのがレッスンの時だけになってしまってもOK!
前述したように、大きな音が出せない環境だとどうしても遠慮した吹き方になります。また、いつもはカラオケで練習するけれど忙しくて行けなかった、家族が家にいて気を遣ってなかなか音が出せなかった・・・などなど、思うように吹けないこともあると思います。
もちろん楽器は練習すればするほど上達の可能性があります。ですが練習の質がとっても大切です。教室で良い音が出せた時の吹き方で練習ができないと、あまり意味がありません。それならいっそおうちでコソコソ吹かないで、教室に来たときに思いっきり吹いていただく方が良いと思っています。
なかなかご自宅で練習する時間が取れない・環境が作れない場合は、レッスンの頻度を上げて練習と兼ねてしまうのも一つの手です(実際、月に8時間レッスンを受けていらっしゃる生徒さんもいます)。週に3〜4日コソ練をして月に2回のレッスンを受けるより、月に4回のレッスンにして家では指を動かして譜読みするだけにする方が、上達の面では良いかもしれません。
教室には忙しい大人の生徒さんや学生さんが多いので、レッスンでご提案しているのは基本的に短時間でできる練習方法です。無駄のないコンパクトな練習も音対策の大事なポイント!
心配な方はまずは体験レッスンへ
85デシベルと言われても、実際の感じは吹いたり間近で聞いたりしないことには分からないと思います。音環境に関してご不安な場合も、お気軽に体験レッスンへ足を運んでいただければと思います。どのくらいの頻度で、どれ位の時間練習ができそうか。おうちでの練習が難しそうならレッスンの頻度をどうしていけば良いかなど、状況に合わせてレッスンプランや考えうる対策などをご提案します。
まとめ
フルートは管楽器の中でもうるさくない楽器なので、意外と普通にご自宅で吹いても大丈夫なケースが多いです(時間帯や長さには注意)。しかし、毎日1時間以上吹きたい場合やご近所に聞こえるのが心配な場合、予算に合わせて可能な限りの対策をしておくと安心です。ご紹介した対策方法は周囲に漏れる音を小さくする程度のものですが、日中に練習する場合は完全防音を目指す必要はないと思います(早朝・夜間の練習、何時間も練習する場合には、施設利用を考えたり、もっとしっかりした防音設備を導入した方がよいです)。
音漏れ対策をしても壁が薄くて無理な場合など、どうしても練習環境が整わない時は、いさぎよく次のレッスンの日を待つのも良い判断です。音漏れを気にして小さく吹く練習ばかりして、いざ普通に吹こうと思っても吹けなくなってしまった・・・なんてことになってしまっては本末転倒です。
みなさんが少しでも快適に練習できますように・・・!
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