長年吹奏楽やオケをやってきて、今は教える立場になって、思う事があります。フルート・ピッコロ奏者が最も悩まされるのはピッチ・音程の事ではないでしょうか…?チューナーを見て合わせたはずなのに、合奏に入った時にどうもしっくりこない。他の楽器の音と当たる気がする。私もそういう経験をたくさんしてきましたので、そんな時に役立つヒントを書きました。
まずはチューナーを当てにしない事から
音を「目」で合わせる癖を無くそう
チューナーはとっても便利です。今はマイクをつけるのが当たり前になりましたが、それを使えば合奏の中でも自分のピッチがどうなのかを確認できます。しかしながら、ピッチをチューナで目視するだけの音作りでは良い響きを作れません。もちろん自分の楽器のスケールの癖(上がりやすい、下がりやすい音)をチェックしたり、dim.をかけた時などにピッチが揺れないように練習するのには使います。しかし、他人と音を合わせたりハモらせたりするのにチューナーを使うのは間違いで、それを続けてもハモらせられるようになれないのです・・・。
指導に行く吹奏楽部でも、ピッチが合わないとすぐチューナーを見る癖がついている学生さんが多いのですが、そんな時はとりあえず電源を切ります(笑)プロでもずっとチューナーの真ん中のピッチで吹けるわけではありません。それでもプロの吹奏楽団やオーケストラが良い響きなのは、頭の中に適切なピッチのイメージ(音程感覚)があって、常に全体の響きに合わせて自分も良い響きで吹けるから。プロ並みの音程感覚を身につけるには当然訓練が必要ですが、そこまで到達しなくても大丈夫です。それよりもまずは良い響きで吹くこと、良い響きの音を聴くこと、周りの人の音に寄り添える事が大切だと思います。そのためにも、チューナーを見ることで合わせるのではなく、自分の音や周りの人の音をよく聴く癖をつけましょう。
オーケストラの練習ではチューナーに頼れない
大学に入ってから初めてオーケストラを経験しました。その合奏では、その集団が音楽を専攻する大学生だったからという事もあると思いますが、ハーモニーディレクターやチューナーといったものが登場することはありません。頼れるのは自分の耳だけ。何てシンプルなんだろうと思いました。そして、ハーモニーの取り方なんかを吹奏楽で鍛えてきたという自負があった癖に、オケではそんなものは僅かな手助けくらいにしかなりませんでした。それまで吹奏楽の大音量の中でいかに聞こえさせるか、いかに音程を合わせるか、ということに執着していましたが、オケで吹くことによって、大切なことはそんなことではなかったと気づかされていきました。
フルート・ピッコロ奏者は最高音域を吹いている
最高音域は高めに吹かないと低く聞こえてしまう
フルート、特にピッコロはオケや吹奏楽の中でも最高音域を担当しています。ピアノの鍵盤でいう右手の端の方ですよね。昔ピアノの調律師さんの本を読んだことがあって、そこに書いてあったことに物凄く納得しました。ピアノの右端の鍵盤は、チューナーの真ん中のピッチで調律してしまうと、人間の耳には低く聞こえてしまうのだそうです。ある種の錯覚のようなものだそうです。なので、高音域はすこーし高めに調律するのが普通なんだそう。そうしてはじめて、それより下の音域の鍵盤との違和感が無くなるそうです。 つまり、ピッコロのピッチに関しても同じことが言えると思います。いろんな学校のピッコロの子達を教えたり聞いたりしていて「音程悪いなぁ」と思う時は、大概みんなチューナーのど真ん中をめがけて音程を取っています。それでは聞く人には低く聞こえてしまうのです。
特にピッコロの第3オクターブはちょっと高めを狙おう
じゃあ具体的にどれ位高く取れば良いの?という質問に対して、「チューナーの0より◯セント高め」とか、そういう答え方はしたくありません。あくまで自分の耳を信じて、その感覚を磨くしかないと思っています。私の場合、ピッコロなら大体20セント前後高めにとっているようですが、それも目安でしかありません。ピッコロの音色は人それぞれ違いますし、吹いている環境や囲んでいる人の音も違います。その時その時、瞬間的に周りの響きに溶け込み、皆の音に乗って吹くしかないのです。
この4音は、いつも高め・明るめに吹けるように練習が必要です。じゃあこれらの音が高めになるように頭部管を入れれば良いのでは?と思うかもしれませんが、そうしてしまうと低音域〜中音域のピッチが高くなりすぎます。
フルート・ピッコロ奏者に必要なのは、オクターブ下の音に乗る技術!
曲中で多いシチュエーションに備えよう
私たちは、同じ音域の楽器に合わせることよりも、自分より低い音の楽器に乗ることが多いです。
吹奏楽やオーケストラでのフルート・ピッコロは、前述したように基本的に合奏体の最高音域を吹いています。なので近い音域を吹いている楽器は自分達しかいません。つまり自分達より低い音を吹く人の方が多いわけです。勿論フルート同士でピッチを合わせられることも大切なのですが、それよりも自分より低い音の上に良い響きで乗れることが求められます。
フルートの高音域は良い響きを維持しつつ、上がりすぎないように
オーケストラでのフルートは、隣のオーボエ奏者のオクターブ上を吹くことが本当に多く、ハモれればとっても幸せな瞬間が訪れるのですが、うまく乗れないと関係が悪化します(笑)大概フルートのピッチが高すぎることが問題なことが多いので、フルートのキラキラした音色を大切にしながら、上がりすぎないように気をつけたいところです。
注意したいのは、ただピッチを下げれば良いわけではないという点。ピッチを下げることだけ考えてしまうと、響きがなくなって冷たい音になってしまうので、まずは良い響きで吹くことが第一!
ピッコロ奏者はフルート奏者と一緒にロングトーンをしてもらおう
これは吹奏楽部のパート練習でぜひ取り入れてもらいたい練習です。基本的に、基礎練習は個人が自分の音に向き合う大切な時間だと思っているので、タンギングの練習や響き作りは個々でするべきです。しかし、ピッコロの音程感覚は1人で練習しても掴みにくいので、ぜひパートのメンバーに協力してもらって、一緒にロングトーンをしてもらいましょう。常にフルートのオクターブ上を吹くことによって、良い乗り方を研究することができます。私がピッコロ担当者の指導をする際にその感覚が弱いと思ったら、私がフルートを吹いて学生さんにピッコロで乗ってもらったり(逆も)します。
普段のチューニングも、やり方次第でトレーニングのチャンスに
フルートやピッコロのチューニングをする時、ハーモニーディレクターの音に合わせるなら(できれば生の楽器の音・・・クラリネットやオーボエの音が理想ですが)オクターブ下の基準音を出してもらい、その響きに乗るようにしてピッチを取れるようにするのがオススメです。特にピッコロ担当者はフルートのオクターブ上に乗れないといけませんので、パートでチューニングする時もチューナーを頼りにするのではなく、フルートに乗れる響き・ピッチを狙うようにしましょう。いつも生の音に乗る練習ができるわけではないと思いますので、合奏は絶好のチャンス!ハーモニーディレクターは、その楽器に近い音は出せても生の音の響きには敵いません。生の音の豊かな響きに馴染む音を目指しましょう。
最初は自分の居所がわからず難しいと思いますが、だんだん分かってきます。チューナーを見て合わせようとしている間は出来るようになりませんから、まずは見ないことから始めましょう!
【まとめ】
チューナーとの上手なお付き合いが大切
ここまでチューナーに頼らないことの大切さを書いてきましたが、全く使ってはいけないわけではありません。絶対音感があっても、ある程度楽器の音程の癖を知ったり、ブレを是正するのにチューナーは不可欠です。ffやppでもピッチをキープできているかをチェックしたり、特にデクレシェンドの最後にピッチが下がっていないかを見ることは重要です。しかし練習や合奏でチューニングやハモれない時の助けにしてしまうと、聴いて合わせる力は身につきませんので、使い時をよく考えて使うことが大切です。
でも、結局一番大切なのは「良い響き」
しかし、良いピッチよりも良い響きの方が何倍も大切です。響きが豊かな音で吹けていると、多少ピッチがずれていても気になりません。そういう意味でも、チューナーの真ん中を気にして響きを殺してしまうことがないように、今出ている「音色」「響き」を一番に考えて練習していきましょう。
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