【初心者フルーティスト向け】予算別フルートの選び方

Let’s search for your flute !

 ここではフルート初心者の方にオススメのフルートを、ご予算別にご紹介します。フルートを始める前に費用がどれくらいかかるのか知りたい方は参考になさってください!(価格は2022年6月時点での相場となっています)

当教室ではご予算・使う年数を考慮して、ベストと思われる楽器をご紹介・手配しています。どこの教室でも考え方は変わらないと思いますが、買う前には必ず習う先生に相談してください!勢いで買ってしまうほど勿体ないことはありません。

目次

どの価格帯のフルートでも共通の「メカニック」について

一口にフルートと言っても、実は細かいところが少しずつ違っています。予め知っておくと選ぶ際の参考になります。

「カバードキィ」と「リングキィ」

 フルートにはキィに穴が開いているものそうでないものがあります。前者を「リングキィ」、後者を「カバードキィ」と言います。基本的に初心者の方が使うことを想定している楽器は「カバードキィ」です。

写真上が「カバード」、下が「リング」

 現在プロの多くは「リングキィ」を使っていますが、「カバードキィ」だから鳴らないとか、響かないということはありません。初心者の方にとっては、初めから「リングキィ」にしてしまうと塞げるようになるまで時間を要してしまうので、一般的には「カバードキィ」からスタートします。一方「リングキィ」のメリットとしては、穴を塞がなくてはならないのでいつでもキィの真ん中を指で塞げるようになること、「半開」が出来るので微妙な音程操作が可能になります。また、リングの中からも音が出ていくので、音量が増すと言われています。

カバードキィだとキィの真ん中に指を置かなくても吹けてしまうので、キィの端ばかりを押さえてしまいがちです。キィのバランスが悪くなってしまうので、カバードでも出来るだけ中心の窪みに指を置きましょう。

「オフセット」と「インライン」(フレンチスタイルまたはストレート)

写真上が「オフセット」、下が「インライン」

 次は左手のキィの配列の違いについて。左手薬指で操作するキィ(ソの音を出すキィ)が、外側にずれているものが「オフセット」ずれていないものが「インライン」です。「インライン」は「フレンチスタイル」と呼んだり、単に「ストレート」と呼ぶこともあります。

 こちらも、一般的な初心者モデルは「オフセット」が主流です。まだ手が小さい小中学生が「インライン」の楽器を吹くと、左手の薬指が伸び切ってしまったり、小指が届かなかったりします。「オフセット」は左手薬指と小指に優しい設計なので、大人でも手の小さい方、私がそうなのですが小指がやたらと短い人には適しています(生徒さんはご存じですが、私の小指は自他共に認める短さ!)。

 日本では「カバードキィ」なら「オフセット」「リングキィ」なら「インライン」というのが普通で、「カバードキィ」の「インライン」は見たことがありません(海外の古い楽器にはあるそうです)。ちなみに私の楽器は「リングキィ」の「オフセット」。こちらもあまり沢山は見かけませんが、探せば見つけることが出来ます。

インラインの方がメカの構造がシンプルな分、響きが良いと言われてきましたが、手が小さい場合、インラインを無理して吹く方が音色を損ねてしまうことも。私は自分の手に合うものを選ぶべきだと考えています。

「C足部管」と「H足部管」

 次は足部管の種類について。フルートには最低音がドまでの「C(ツェー)足部管」(通称C足:ツェーそく)と、最低音がシまでの「H(ハー)足部管」(通称H足:ハーそく)があります。私が受験前まで使っていた楽器はC足部管、現在使っている楽器はH足部管です。

 足部管に関しても、初心者用モデルは基本的にC足部管がついています。H足部管だと何が良いかというと、まずシが出せるということと、音色がどっしり安定すると言われています。しかしプロの中にはその音色を好んでC足部管を使っている人もいますし、「C足は初心者用・H足はプロ仕様」という訳ではありません。

シが登場する曲は限られており、ソロ曲でたまーに、オーケストラの曲に時々出てきますが、マーラーという作曲家に至ってはさらに下の♭シを書いてきたりするので、もはやH足でも対応できないことが・・・。

Eメカニズム(通称Eメカ)

 これが大切な知識なのですが、Eメカニズム(通称Eメカ:英語読みで「イーメカ」、ドイツ語読みで「エーメカ」という人もいます)というメカニックがついている楽器と、ついていない楽器があります。現在はヤマハの一番安いモデルにも標準搭載されていますので、Eメカ付きの楽器を吹いている人の方が多くなってきた印象です。私が初めて買ってもらった楽器には付いておらず、たまに戻ると今でもちょっと苦労します。

 Eメカニズムがついていると、フルートで鬼門の一つとされている第3オクターブのミの音が吹きやすくなり、その音に関係する第2オクターブのラや、第3オクターブのラとの行き来が革命的に楽になります。もちろんEメカガ無くても吹けるのですが、楽器の構造上難しい音に演奏技術で立ち向かうより、メカニックに助けてもらってプレッシャーをなくす方が有益です。以前はリングキィの楽器には要らないと言われていましたが、最近はリングキィにも搭載するのが普通になってきました。Eメカ無しの楽器を吹くと分かりますが、この第3オクターブのミは本当に嫌な音なのです・・・。

もちろん他にも難しい音はたくさんあるのですが、ひとつ減るだけでかなり変わってきますので、ここはケチらずにEメカ搭載の楽器を選ぶのが良いのではと思います。

ここまでのまとめ

初心者の方には「カバードキィ」「オフセット」「C足部管」の楽器で「Eメカニズム」搭載のフルートが一般的で、オススメです。多くの初心者用モデルはこのスペックで作られています。

もちろん習う先生とよく相談した上で「リングキィ」を選んだりするのは良いと思います。大事なのは「リングの方が玄人っぽくてかっこいいから」とか、「将来H足が欲しくなるかもしれないから」などと、何となく独断で選ばないことです。

ご予算別!オススメのフルート

 ここでは私の独断と偏見を含めたオススメのフルートをご紹介していきます。私の考え方としては、予算と楽器のスペックに応じて上手に中古と新品の中から選ぶのが良いと思っているのですが、中古の楽器を選ぶのは本当に難しいので、必ず試奏(試し吹き)が出来るお店で探しています。価格の目安は2022年6月現在の公式情報をもとに記していますので、店頭価格は異なる場合があります。大方の相場だと思ってご覧ください。

長く吹くか分からない、とにかく安く抑えたい!:日本製の中古フルート

 最近は中国や台湾など海外からとんでもなく安いフルートが入ってきており、5万円を切る新品は基本的に海外製です。しかし現状まだオススメは出来ません・・・。調整が出来なかったり、吹きごこちに違和感のあるものもあります。それよりは、日本製であるヤマハなどの低価格モデルの中古を見繕って手に入れる方が良いというのが今のところの見解です。

ヤマハ211の中古

 例えばこちらの写真の楽器は、つい最近新しい生徒さんのために探してきた中古のヤマハ(YFL211:生産完了モデル)。現在新品(YFL212)ですと8〜9万円程度ですが、こちらは一世代前の中古で約4万円でした。
 楽器屋さんのホームページで発見し、実際にお店に足を運び実物を試奏させてもらい、色々な曲や難しい音の組み合わせなどを試してみて、違和感なく吹けることとメカニックに異常がないことを確認。調整がきちんとされていないと、安く買っても結局修理代がかかってしまうので、ここは大変重要です。

安くても状態が悪いと結局修理代がかかり高くつくことも!

ヤマハの初心者用モデルの比較

モデル(新品時の
定価)
スペック中古価格
YFL221
(6.5万円、生産完了品)
Eメカ無し3万円台前半
YFL211
(7万円程度、生産完了品)
Eメカ搭載4万円弱
(オススメ!)
YFL212
(8〜9万円)
Eメカ搭載中古が少ない
ヤマハの新旧初心者モデルの比較

同じモデルでも、221と211はかなり長い間製造されていたので年代にバラ付きがあります。ケースの色や品番で見分けるのですが(マニアの世界)、値段が上記の価格よりもあまりに安い場合はかなり年代物の可能性大です。

予算10万円以内:銀メッキのフルート、頭部管銀製フルートの中古

 一般的にフルートを始める際に選ばれることが多いのがオール銀メッキのものです。ベースは洋銀や白銅という合金で出来ていて、全体に銀メッキが施されています。重さが軽く明るい音色、ほぼオフセット・カバード・C足部管です。初めて吹く方にはなるべく素直に音が出る楽器が良いので、そういう面でもやはりヤマハが安心です。
 また、ヤマハの一世代前の頭部管銀製モデル(YFL311)が中古では6〜7万円で出ていますので、適切に選べれば選択肢として有りだと思います。

モデルスペック価格
ヤマハ / YFL212
(新品)
白銅銀メッキ、Eメカ搭載定価8〜9万円
ヤマハ / YFL311
(中古)
頭部管銀製、Eメカ搭載6〜7万円
(現モデル312の定価15万円)

何となくヤマハは「初心者用」のイメージが強くて敬遠されがちですが、私の母のヤマハのフルートは40年以上経ってもまだちゃんと吹けます。このとんでもない耐用年数、個体のばらつきのなさ、コストパフォーマンスの良さは、ヤマハの生産技術の賜物です。特に素直な吹き心地が初心者の方にはオススメ!

予算20万円:頭部管銀製のフルート、管体銀製フルートの中古

 吹奏楽部で中学高校と続けるつもりの学生さんや、すでに管楽器を経験している大人の方にオススメなのが頭部管銀製モデル。オール銀メッキのものよりも多彩な音色を出すことができます。また中古市場でこの予算だと、キィを除くパイプの部分が全て銀製の「管体銀製」の楽器も良いです。頭部管銀製モデルより少しだけ重量があります。

新品

モデルスペック価格
ヤマハ /
YFL312(新品)
頭部管銀製、
Eメカ搭載
定価15万円弱
パール /
PF665E(新品)
頭部管銀製、
Eメカ搭載
定価17万円弱
アズミ /
AZ-Z2E(新品)
頭部管銀製、
Eメカ搭載
定価19万円弱

「アズミ」は次の表に登場する「アルタス」というメーカーがプロデュースして、台湾で生産しているシリーズ。国内生産の「アルタス」より価格が抑えられています。

中古

モデルスペック価格
ヤマハ / YFL411(中古)管体銀製、Eメカ搭載10万円〜
(現モデル412の定価20万円)
サンキョウ /
エチュード(中古)
頭部管銀製、Eメカ搭載10万円前後〜
(新品の定価27万円)
ムラマツ /
EX(中古)
頭部管銀製、Eメカ搭載15万円前後〜
(新品の定価29万円)
*中古少なめ
アルタス アズミノ/ A1007
(中古)
管体銀製、Eメカ搭載16万円〜
(新品の定価35万円)
サンキョウ /
シルバーソニック(中古)
管体銀製、Eメカ搭載17万円〜
(新品の定価40万円)

この辺りのモデルになるとメーカーもいろいろ選べるようになってきます。それぞれ個性があるので、ある程度自分で比べらるくらい吹けるようになってから、先生と一緒にこのクラスの楽器を選ぶのもオススメです。

ここ最近新品の楽器の価格が高騰しており、それに便乗して中古のフルートも値上がり傾向です。年代が古いものも値段が高めに設定されている事がありますので、店頭でよく確認するか、詳しい方に助けてもらいましょう。逆に安すぎるものも要注意。

予算30万円:頭部管銀製の新品フルート

 予算に余裕があり、数年単位で長く続けるつもりならばこれくらいの価格帯が良いと思います。この辺りになるとメーカーによる個性が分かりやすくなってきますので、自分の吹きたい音のイメージに合った楽器を選びたいところです。新品の楽器は試奏程度でしか吹かれていないので癖もなく、何よりピカピカです。

先ほどの予算20万円でも、中古ならば管体銀製(頭部管銀製よりもスペックは上)の楽器が買えたりもするので、スペックを取るか新品を取るかという部分も要検討です。

モデルスペック価格
アルタス / A907E
(新品)
頭部管銀製、
Eメカ搭載
定価25万円
サンキョウ /
エチュード
(新品)
頭部管銀製、
Eメカ搭載
定価27万円
ムラマツ / EX
(新品)
頭部管銀製、
Eメカ搭載
定価29万円

まれに総銀製(キィ・メカニックまで全部銀製)の中古が30万円前後で出ていることがあります。ヤマハの総銀ならあり得るのですが、現在総銀製の定価が60〜70万円という世界なので、30万円の総銀製中古はちょっと安い印象です(かなり古かったり、未調整の可能性もあるので慎重に選びましょう)。


 なんとなく「この辺りの価格帯が良さそう」という目星はついたでしょうか・・・?それぞれの教室の先生が、それぞれの考え方や楽器屋さんとの繋がりを持っているので、習う前に買ってしまわずに先生に相談してみましょう。

私たちは試奏や楽器屋さんとのやり取りにも慣れていますし、「手間をかけて申し訳ない・・・」なんて思う必要は一切ありません!「最初の一本」は間違いなく「思い出の一本」ですから、遠慮なく先生に頼みましょう!

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