【管楽器】音が思うように響かない時、原因は骨盤かも

 私は現在ヨガの勉強をしております。何のためかというと、生徒さんたちの呼吸や演奏姿勢により深くアプローチするためです。ヨガの指導者養成講座ではポーズを取った時により効果を出すため、そして怪我をしないように、解剖学を学びます。その中で骨や筋肉、神経について、かなり具体的に勉強しています。今回は骨盤についてのお話です。

目次

骨盤の前傾・後傾

 最近たまたま骨盤の前傾がある方と、後傾がある方の両方に出会いました。

 私も自分が反り腰の傾向(つまり骨盤が前傾している)であることは自覚していて、演奏中だけでなく普段も反らないように気をつけています。

 ある方のレッスンでは、なんだか姿勢がよく分からないし良い音が出ない…ということでしたので、遠目から全身状態を観察させていただきました。するとかなり骨盤が後傾していて、背中がまるまってしまっていることが分かりました。

 別の方のレッスンでは普段通りの音色が出ていないと感じたので、また生徒さんの周りをあちこち移動して観察。すると太ももがピンと張っていて、骨盤が前傾していることに気づきました。

 お二人とも、正しい骨盤の位置に戻してあげると途端に音が立体的に響くようになりました。あまりに顕著な違いで、私自身も少し驚くほどでした。

骨盤が傾くと何がいけないのか

 人間の体は生まれたときは完璧なデザインである言われています。しかしだんだん運動のクセや習慣で筋肉や骨格に歪み(不均等)がでてきます。

 そもそも人間の体は左右均等ではありません。内臓も左右対称ではないですよね。例えば競技場のトラックが必ず左回りなのは、左半身が比較的軸として機能しやすいからなのだそうです。身体の左右差を考慮しているわけです。そんなこともあり、どうしても人間の体のバランスは崩れていきますが、崩れながらもバランスを取っています。

 しかし演奏時にはできるだけ身体をベストバランスにしたいものです。以前の記事で呼吸について述べているのですが、身体のバランスが崩れていると呼吸が上手くいきません。演奏時は非常に深い呼吸が必要となるので、最も身体の呼吸機能が働きやすい姿勢を目指すことで、演奏が快適になり良い音が出るのです。

 上の図にはいろいろな身体のバランスが描かれています。4パターンありますが、実際には100人が100人異なりますので、あくまで傾向だと思ってください。

 「正常」と書かれている姿勢を見ると耳→肩→骨盤の中心→膝→土踏まずが一直線に並んでいます。なかなかこの状態で演奏ができている方はいませんが、これが理想です。一方で他の3つを見てみると、耳から土踏まずまでが一直線上にありません。

 注目したいのは、反り腰の人。一見姿勢が良く、カッコよく見えたりするかもしれませんが、実はかなり腰回りに負担がかかっていて、膝が伸び切っているのも特徴です。良い姿勢を取ろう!と思う人に多いように思います。

 骨盤が前傾したり後傾したりしていると、身体のバランスが崩れてしまうだけでなく、別の記事で書いたように横隔膜の機能も最大限引き出せなくなってしまいます。

骨盤をニュートラルポジションにする

 骨盤を前傾も後傾もさせない状態にする…それをヨガの講座では「骨盤のニュートラルポジション」という言葉で表現されていました。この「骨盤ニュートラル」が案外難しく、おそらくみなさんどちらかには傾いているのではないでしょうか。

 骨盤をニュートラルにすると、横隔膜と骨盤底筋群がきちんと向かい合うので、深い呼吸がしやすくなります。ニュートラルにした骨盤の上に自然なカーブで背骨を積み上げ、土踏まずの真上に頭が来るようにしてあげると、身体が安定します。身体を立たせておくのに余計な力を使わなくて済むので、呼吸に関わる筋肉や演奏に必要な腕・手指の筋肉も存分に使う事ができるのです。

 私がこのお二人のレッスンでお伝えしたのは、この骨盤のニュートラルポジションです。骨盤をニュートラルにしただけで、身体が安定し呼吸が深くできるようになり、結果的に楽器にきちんと息が届くようになったので音色が改善したのです。

骨盤の前傾・後傾チェック

[図1]手のひらで骨盤の傾きをチェック

 骨盤がニュートラルポジションかどうか確認するには、まず骨盤を形成する骨を実際に触ってみるのが一番分かりやすいです。ポイントは図に赤い丸で表した3点、左右の腸骨の一番前に尖っているところ(上前腸骨棘・じょうぜんちょうこつきょく)と、恥骨(正確には恥骨結合)です。これらを覆うように両手で三角形を作ってみます。両手のひらが地面に対して垂直になっていれば、骨盤がちょうどよく立っている状態です。

[図2]横から見たときの上前腸骨棘と恥骨、
縦に揃っていると骨盤がニュートラルになっている

  反り腰になりやすい私は、気を抜くと図1のように手を置いた時に、指先が真下よりも手前に向いてしまうので、骨盤を後ろに寝かせるイメージを持つようにしています。

 逆に猫背になりやすく骨盤が後ろに倒れやすい方の場合、このチェックをした時に指先が持ち上がりますので、指先が真下を向くように(骨盤を起こすように)意識します。

結局呼吸がもっとも大切

 今回は骨盤に着目してみました。ヨガのレッスンでは、どんなポーズをとっていても骨盤のニュートラルポジションを意識するように教わります。骨盤は身体の真ん中あたりにあり、下半身と上半身を繋いでいますので、骨盤が前傾したり後傾したりすると下半身や上半身もその影響を受けてしまい、安定したポーズが取れず、ヨガでも重んじられる深い呼吸ができないからです。

 楽器の演奏も全く同じです。私も自分や生徒さんが不調の時にはまず楽器の調整具合をチェックします。楽器が大丈夫そうだとなった時に、次にチェックするのは大抵頭部管の角度や持ち方、リッププレートと唇の位置関係などだと思います。私の経験では、それらを見直しても改善しない場合、息がうまく吐けていないことが不調の原因であることが殆どです。そしてそのまた原因は姿勢…今回は骨盤の前傾・後傾でした。

 安定した身体は最小限のエネルギーで最大のパワーを出せる状態。そうでない状態で演奏をするのは数十倍難しいのですが、実際そのような戦いを強いられている方が多くいらっしゃいます。いろいろ改善しようと試みているのに、イマイチ効果が出ない…そんな方は骨盤の位置をチェックしてみてください。骨盤の傾きが変わると、上半身や下半身がどう変わるのかもぜひ観察しましょう。

 不調に対していろいろなアプローチがあると思いますが、結局呼吸なのだなと思います。アンブシュアの不調、タンギングの不調、響かない…こういった悩みに対して、対症療法的なやり方をしていても根本的には解決できません。息を生み出す身体そのものを見直すことで、ぐっと演奏が楽になります。皆様の演奏が少しでも快適になりますように…!

 呼吸についてはこちらの記事もぜひ参考になさってください。

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