【フルートの思い込み】高音が出ない人ほど、頑張りすぎている?譜例付き!”症状別”練習方法も

 高音域Fisが来ると、急に緊張する。Gisがどうしても当たらない最高音のCが楽譜に出てくると、「ちゃんと鳴らさなくちゃ」と身構えてしまう。そんな経験はありませんか?

 高音域が苦手だと、「もっと息を使わなくちゃ」「もっと唇を締めなくちゃ」「もっと頑張らなくちゃ」と考えてしまいがちです。でも、高音域を安定して演奏するために必要な考え方は逆かもしれません。

 高音が当たらない人ほど、唇を締める、舌に力を入れる、指で楽器を握る、歌口のエッジに息を集める…と頑張っています。このように「高音を当てよう」とするほど、自分から高音のストライクゾーンを狭くしているのです。

 今回は、高音が出ない時にやってしまいがちなことと、もっと楽に高音域を吹くための考え方、症状別の練習方法についてまとめます。

<この記事を読むとわかること>
  • 高音域が難しい理由
  • 高音域の音が出ない原因
  • 高音域を楽に吹くためのコツ、【症状別】練習方法
目次

高音域が難しい理由

 フルートの高音域も、途中までは比較的吹きやすいです。E(ミ)の音に関しては、Eメカが搭載されているか否かで別れるところではありますが、Eメカ無しの楽器でも慣れればそれほど難しくありません(Eメカ付きの楽器に慣れてしまうと、急にEメカ無しの楽器を吹いた時に「あ」となることはありますが)。

 しかしFis(♯ファ)からは急激に難しくなります。直前のF(ファ)までは順調に吹けるのに、Fisはやたらと吹きにくい。指は合っているし、一生懸命吹いているのに、なぜか5度下のH(シ)みたいな音が出てしまう…。そしてその上のG(ソ)は吹けるのに、今度は次のGis(♯ソ)が当たらない…。

 このFisとGisは周辺のFやGに比べると曲者で、高音域では特に鬼門と言っても良い音です。周辺の音に比べて、息のスピードや密度を求められる音なので、まだ息をうまく集められない初心者には吹くことがかなり難しいです。また、ある程度熟達している奏者でも、ちょっと加減を間違うとすぐ5度下の音に落ちてしまって、苦い思いをすることも少なくありません。

 強く吹きすぎると汚い・きつい音になってしまうし、柔らかく吹こうとして息が弱くなりすぎると当たらない…特にFisやGisは絶妙な息のコントロールが必要な音なのです。

 ここで詰まってしまうと、そのさらに上の音もなかなか当たりません。また、一度苦手意識を持ってしまうと、この音域の音が楽譜上で迫ってくるだけで緊張し、より演奏を難しくしてしまうのです。

高音域の音が出ない時にやりがちなこと6つと、その根本原因

 具体的にFisやGis、それ以上の高音域の音が出にくい・出ないという状態に陥っている時に、ついやってしまいがちなことを挙げていきます。そして、それらを引き起こす根本的な原因はなんでしょうか。

❶アパチュアを狭くしすぎている

 高音域は息のスピードが必要だ!と、反射的に唇を閉じてアパチュア(唇の間の穴)を小さくしすぎてしまうケースが多いです。これは自らストライクゾーンを狭くしているのと同じで、歌口のエッジ周辺から息が外れてしまう原因となります。

❷タンギングで邪魔をしている

 高い音を当てよう!と思うあまり、舌に力を込めてタンギングを頑張ってしまうというケースも多いです。舌の動きが息の流れを妨げてしまい、息がスポンと音にならなくなってしまうのです。また舌に力が入ると、その緊張が顎から喉へと伝わっていき、音の素である息がスムーズに出なくなります。

❸指に力を入れてしまっている

 高音域の運指は、第2オクターブまでと比べると変則的です。特にGから先は左手の親指や右手の小指を離したりと不安定になりやすいため、楽器を握ってしまいがちです。

 指に力が入ると楽器が揺れてしまったり、角度が変わってしまう可能性があります。また指の力みは腕、肩、首、唇…と伝わっていきます。すると連鎖的に❶や❷も引き起こしてしまうのです。

❹歌口のエッジに息を集めようとしている

 苦手な音になるほど、歌口のエッジを意識してしまう方は多いです。しかし、歌口のエッジを息のゴールだと思って吹いてしまうと、どんなに息を吹きつけても音が出ないか、鳴ったとしても詰まったような音になってしまいます。

❺歌口を塞ぎすぎている

 出しにくい音域になると、ついつい楽器を手前に傾けて歌口のエッジを自分に近づけようとしたくなります。しかし手前に楽器を傾けると、歌口が下唇によってかなりふさがってしまいます。それに伴い音が潰れていき、最終的にはどの音域の音も出なくなってしまいます。

 楽器を手前に傾けてしまう癖は、意外とご本人も気づいていないことが多いです。

❻口の中を広くしようとしている

 音が鳴っていない・響いていない、という時に「口の中を広く」というアドバイスをされることがあります。これは音によっては有用ですが、高音域においてはあまりオススメできません。

 高音域を吹くためには息の密度を上げる必要があるのに、舌を下げて口の中を広くしてしまうと、息のスピードも密度も下がります。

 口腔の広さを正しく知っておくことは大切ですが、舌まで「おーー」という時のように下げてしまうと、唇を締めたり、息の量を増やすことでしか高音域が吹けなくなってしまいます。

これらの根本原因は「息」で吹けていないこと

 ここまで6つの原因を挙げてきましたが、これらを引き起こしている大元の原因は「息で吹けていない」ということにあります。唇の形を念入りに作っても、タンギングを頑張っても、指に力を入れても、高音域は綺麗に鳴りません。

 どの音域においても音の素は「息」です。このことを忘れてしまって、唇や舌・指などの”小手先”で解決しようとしまうと、必要のない力を使うことになり、かえって良い音が出なくなってしまうのです。

高音域を楽に吹くための5つの心構え

 上記の原因を踏まえて、まずは高音域を楽に演奏するために必要な心構えを5つ挙げてみます。

その1<高音域専用のアンブシュアはいらない>

 つい「Fisのアンブシュア」のような「高音域専用のアンブシュア」を作りたくなりますが、アンブシュアを作らないと吹けない、という前提をまず無くしましょうフルートは全音域ほぼ同じアンブシュアで吹けます

その2<高音ほどタンギングは軽やかに>

 タンギングは、音の出だしを整える役割です。確かにその人の音の印象を決める大切な要素ではありますが、タンギングだけでは音は出ません。きちんとその音に必要な息が出て、初めて音になるのですが、出しにくい音ほどタンギングでどうにかしようとしてしまいがちです。

 難しい音ほどタンギングで頑張るのではなく、むしろ息遣いを邪魔しないように、舌の先端だけを繊細に使いましょう。また、タンギングした後も舌全体が下顎の方へ落っこちないようにします。

その3<安定した構えで指の力を抜く>

 左手の親指や右手の小指を離した時にぐらつきそうになるのは、3点支持が不安定である可能性があります。右手の親指、左手の人差し指の付け根、下顎の3箇所だけでフルートを支えられますか?高音域の難しい運指を吹く前に、必ずバランスを確認しましょう。

 そして出しにくい音がやってきた時に、ギュッとキィを握っていないか観察してみてください。

その4<息は歌口を通過する>

 歌口のエッジに息を集めるイメージを持っている方は多いですが、音が出にくい・響かないと感じているのであれば、歌口のエッジを息が通り過ぎるイメージに変えましょう。

 エッジに集めようとすると、詰まった硬い音になりやすく、唇や下顎周辺、首などに不必要な力が入ってしまったりという弊害もあります。

その5<歌口をあけて息を長く>

 無意識のうちに楽器を手前に傾けないように注意して、歌口の開き具合が小さくならないようにしましょう。フルートの音が鳴る条件として、歌口の手前は1/3程度ふさぐ、というものがあります(1/4という先生や教本も)。つまり2/3は開けておきたいのです。

 第3オクターブ以降の音は、唇から歌口のエッジまでの息の長さを長めにイメージする方が良い音が出ます。外れるのが怖いと唇からエッジまでを近づけたくなりますが、思い切って逆にします。

症状別!おすすめの練習方法(譜例付き)

 最後に、症状別に高音域の練習方法をご紹介します。注意点として、自分の状態に合った練習を選ぶようにしてください。例えば、②の症状のある人が①のハーモニクスの練習をすると逆効果になります。

 全ての練習において意識したいのは「舌の位置」です。サ行を発音する時のように舌を上顎に近づけて吹いてみると、今まで息を浪費したり、唇を酷使しないと当たらなかった音が出やすくなるかもしれません。

①大きな音しか出ない、息を増やさないと吹けない人
→【第3倍音の練習】

 高音域には独特のツボがあります。出しにくい音の完全5度下の運指でその音を吹く練習をすると、たくさん息を使わなくても鳴らすためのコツを掴みやすいです。

<譜例1>
ハーモニクスを使った第3オクターブのEとFisの練習例。2・4小節目は実音符で◇の音を出します(1〜2小節目はずっと下のA・ラの運指、3〜4小節目はずっと下のH・シの運指)。スラーでは難しい場合は、各音の出だしでほんの少し柔らかいタンギングを入れてもOK。

・息を増やしたり、アンブシュアをギュッと閉じて上の倍音を吹こうとしない
・歌口に息を集約するのではなく、より「長い息」をイメージする
・舌を下げすぎない、寧ろ上顎に近づける

②Fisなどの難しい音でアンブシュアが変わってしまう、意識してしまう人
→【前後の鳴らしやすい音から練習】

 難しい音をいきなり吹こうとするより、比較的楽に吹ける音から難しい音に行く方が易しいです。

<譜例2>
モイーズの“ソノリテ”の練習の変形のような練習。美しいレガートで。

・Fから Fisへ行く時に、アンブシュアを緊張させないようにして、 Fisに必要な息を探す(Gisへも同様に)
・舌を下げすぎない、寧ろ上顎に近づける

③最初からきちんと鳴らせない人→【ノンタンギング】

 吹き始めに唇や舌にストレスを感じていたり、それらで高い音を狙うクセが付いている人は、息だけで高音域を吹く練習を積極的にしましょう。

<譜例3>
まずしっかり全音符で伸ばしてみて、必要な息のスピードや長さを確認。次の小節では、その息を最初から生み出す意識を持って、短い時間できちんと鳴らす。最初はタンギングをしないで吹くのがおすすめ。タンギングなしで吹けるようになってから、オマケ程度(←ここが重要)にタンギングをつけてみましょう。

・唇で絞り出すのではなく、肺の底から歌口のエッジ(正確にはその先)までの長い息をフルに使うこと
・舌を下げすぎない、寧ろ上顎に近づける

まとめ

 高音域が出ない時、「もっと頑張らなくては」と思ってしまうのは自然なことです。でも、フルートの高音域は、頑張るほど吹きにくくなることがあります。

 唇を締める。タンギングを強くする。指で楽器を握る。歌口のエッジに息を集める___こうした「高音を当てるための努力」が、かえって息の流れを邪魔しているかもしれません。

 高音域で大切なのは、特別なアンブシュアを作ることでも、力を込めることでもありません。その音が鳴るための息をきちんと使い、その息を邪魔しないこと。そして、楽器を安定して支え、唇や舌、指に余計な仕事をさせないことです。

 高音が苦手だからといって、必ずしも練習が足りないわけではありません。むしろ、頑張りすぎていることで自分から難しくしている可能性もあります。次に高音が当たらなかった時は、「もっと頑張ろう」ではなく、「何が息を邪魔しているんだろう?」と一度考えてみてください。

今日試してほしいこと

 今日試してほしいのは、苦手な高音をいきなり当てようとしないことです。たとえばFisが苦手なら、まずFを吹きます。そのままアンブシュアを変えずに、Fisに必要な息を探してみてください。

__「Fisを当てる」のではなく、「Fisが鳴る息を探す」__

 この感覚で吹いてみると、いつもより力が抜けた状態で高音が鳴るかもしれません。そして、もし高音になる瞬間に唇、舌、指のどこかに力が入っていたら、そこも観察してみてください。高音は、頑張って当てるものではなく、鳴る条件を邪魔しないことから始められます。

今回の記事のように、フルートには「こうしなければ吹けない」と思われていることがたくさんあります。でも、すべての人に同じ吹き方が合うわけではありません。
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