リッププレートを当てても、
「違う…」
もう一度当て直す。
「まだ違う…」
そんなふうに3回、4回と当て直してしまうことはありませんか?私も昔は、吹き始めるまでに10秒近くかかっていました。それでも思ったような音が出ない。「良い」と思っている位置からちょっとでもずれると音が出ない…。
でも今は2〜3秒で構えて、そのまま吹き始められます。”当てる位置”が1mmもずれなくなった訳でも、”もっと良い位置”が見つかった訳でもありません。リッププレートの位置に迷ってしまうのは、「位置が原因だと思っていること」が原因だったのです。
- リッププレートの位置はそれほどシビアではない
- コンディションが安定しない原因
- パッと当てて音が出るようにする為に必要なこと
2〜3秒あればフルートは構えられる
かつての私も、フルートを当てるのに10秒はかかっていました(かけられない時は不安で仕方ない)。でも、今は最短2〜3秒で構えることができます。
今は生徒さんからそういった悩みをお聞きする事が多いのですが、その際にお話ししていることや、改善のための考え方についてまとめてみます。
音が出るリッププレートの位置の範囲は意外と広い

「ココ」に当てないと出ない…ちょっとでもズレたら出ない…
そう思っている人は少なくないようです。しかしプロの演奏を見ていると、ものの一瞬で構えて音を出していますよね。
きっとプロになるような人は、小さい頃からフルート一筋で、練習をたくさんしているに違いない…だからあの短い時間でも寸分違わず当てられるんだ。やっぱり努力がまだ足りないのかな…
そう思われるかもしれませんが、実際は違います。1mmもズレないように当てようなんて思っていません。それほど位置に拘っていない、というのが答えです。
フルートの音が出る条件はある程度あるのですが、結構ガバガバです。極論、リッププレートが少しふさがっていて、息が歌口をかすめていけば音は出ます。今も、確かに難しい音となると丁寧に楽器を当てた方が安心ですが、ストライクゾーンは昔よりも広くなりました。
もしあなたが「ここじゃなきゃダメ」となってしまっているのであれば、それには理由があります。
「当てる位置迷子」になる理由
❶息で吹けていない

私が「当てる位置迷子」だったとき、あらゆる音の出し方をアンブシュアに頼っていました。難しい音の狙い方も「これくらいの引っ張り具合かな…」などと思っていましたし、タンギングが難しい音でも唇で息を集めようとしていました。
ものすごく細かい息の調整を全て唇で行っていたので、疲れやすく、音が外れることも多々ありました。しかしこれが今思えば「唇で吹いている」、つまり「息で吹けていない」という状態だったのです。
今はレッスンをする側になりましたが、フルートの音を「唇」で作ろうとしている人ほど、当てる位置が定まらない…ズレると吹けない…と悩んでいるように思います。
アンブシュアを作り込みすぎてアパチュアが狭い場合、音が出るストライクゾーンも狭くなります。すると、ちょっとズレただけで音が出なくなったり、どこに当てたら良いか分からない…という状態になりやすいのです。
❷当てるまでのプロセスにブレがある

リッププレートを当てる時に、その過程を決めていますか?つまりルーティンのようなものです。例えば、両唇を閉じた状態で当てるのか、開けた状態で当てるのかでも、多少当てる位置が変わってきます。
また当て方にも差があります。「歌口を唇で塞いで外に戻す」方法や、「歌口を外に向けて下顎にはめ込み、歌口を手前に戻す」方法、「まっすぐ前から当てる」など…先生によっても推奨する方法は違います。自分の唇や顎にあった当て方を見つけることがまず先決ですが、見つけたらいつも同じやり方をすることが大切です。
❸頭部管のセッティングがいつも違う

頭部管と胴部管の角度の関係について、あまりこだわりのない人もいるようですが、私はここだけは厳密にしています。何か意図があって角度を変える事はありますが、基本的には付けている印を基準にして、毎日同じ角度で吹きます。
頭部管の角度が日によってまちまちだと、調子が悪い時に何が原因か分からなくなり、当て方迷子の原因にもなります。
❹演奏姿勢を無理に作ろうとしている

肩こりの原因が肩にはない、と言われるように、口元が定まらない原因は口元にはない、と言えます。ここまでは息、プロセスや頭部管の角度のブレ、と来て、最後は最も大切な体幹や姿勢です。
フルートの構え方は一見無理があります。しかし、うまく構えれば何時間吹いていても変に疲れたりはしません。うまく構えるには、それなりの鍛錬が必要なのでしょうか?答えはNOです。
うまく構えている人は、演奏姿勢を無理矢理作ろうとしていません。吹きながら歩いたり踊ったり、人によってはリフティングも出来るくらい(!)、「フルートを持とう」としていません。歩きながらフルートを吹いてみるのは非常におすすめです。
無理のある演奏姿勢を「作ろう」としていると、それを維持することがまず仕事になります。そうして過度に意識をして作る姿勢は、日によってブレます。
体幹が不安定だったり姿勢が定まらないと、楽器の当て方も当然分からなくなります。そして呼吸も浅くなります。呼吸は最初に挙げた理由ですが、その呼吸も姿勢の影響を大きく受けています。つまり、「息」「姿勢」は別々の問題ではなく、互いにつながっているのです。
楽器を当ててすぐ吹けるようになるために
アンブシュアではなく「息で吹く」ことを意識する
音を生み出すのは「唇」ではなく「息」である、ということを思い出しましょう。
良い音を出すには、あの名手のような良いアンブシュアにしなければ…と思うかもしれませんが、アンブシュアは息を吐いた結果です。先に作ろうとしてしまうと、息を邪魔してしまい良い事がありません。
フルートを吹くための息のビームは、案外細くありません。もちろん歌口の横幅よりも広すぎて息を浪費するのは問題ですが、そうでなければ必要以上に細くする必要はありません。補足しない方がストライクゾーンは広くなり、適当に当てても音が出るというフェーズに近づけます。
頭部管のセッティングをメモする
楽器の支え方が安定していないと頭部管のセッティングも決めにくいのですが、この辺が吹きやすい、と思ったら油性ペン等で印をつけることをおすすめします。
油性ペンの印は手汗や手の脂で案外すぐに消えてしまうので、必要に応じて書き足す必要があります。ある程度定まったら、マニキュアなど取れにくいもので印をつけると良いです。
自然な姿勢を心がける
演奏前に自分の姿勢をチェックしてみましょう。体幹部が定まらないと、手元や口元のブレはさらに大きくなります。
足裏全体に体重が乗っているか。左右の足の体重の感じ方はどうか。体幹にねじれがないか。頭の位置・角度はどうか。両腕の負担はどうか。
「良い姿勢」ではなく、自分にとって「自然な姿勢」を目指しましょう。
当てるまでのプロセスを決める
楽器を当てるまでに「唇をどうしておくか、どう当てるか」をいつも同じにすることで、ブレが少なくなります。
私のおすすめは唇を閉じた状態で当てる、です。開けていると、開け具合がその時その時で変わりやすいのと、上唇からの歌口までの距離を感じにくいからです。
そしてリッププレートをどうあてるか。唇で歌口をふさぐようにしてから、くるっと外に向けて構える人も多いですが、下唇にある程度厚みがある場合は違う方法の方が楽に吹ける場合もあります。
このことについてはこちらの記事で解説しています。

まとめ
リッププレートを当てる場所を迷ってしまう、少しでも良い場所からずれると音が出ない___そういったお悩みを解決するためのヒントをお話ししてきました。
当てる場所が定まらない、ちょっとずれると吹けない…という時、「1mmもズレないようにあてなくちゃ」と頑張っても実は解決できません。姿勢はどうか、息はきちんと使えているか、セッティングや当てるプロセスはいつも同じか__といった、当てる前までに鍵があります。
私もかつては当てるのに時間がかかっていましたが、位置に拘らなくなった今の方が当たり外れは無くなり、演奏も楽になりました。ぜひ同じようにお悩みの方は、「当てる位置」にとらわれずに、自分にとっては何が原因なのかを考えてみてください。
今日試してみて欲しいこと

「歩きながらフルートを吹く」です。
試しに部屋の中を歩きながら吹いてみてください。吹きながら歩けるということは、自然に楽器を持てているということです。逆に「動いたら絶対吹けない」という状態なら、楽器を吹くための自分の条件がかなりシビアになってしまっています。今よりもっと「ラフ」にフルートを吹けるようになると、いろいろなことが楽になってきます。

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