【フルートの思い込み】タンギングがバサバサする…原因は「舌」ではないかもしれない

 速いスピードの中でタンギングをすると、音がバサバサしてくる…そんな経験はありませんか?タンギングが上手くいっていないと、「息をまとめなくちゃ」と思って唇を気にしたり、「舌でもっとはっきり発音しなくちゃ」と思って舌をたくさん使ったりしてしまうかもしれません。

 しかし、タンギングが上手くいかないときに舌や唇よりも先に確認して欲しいことがあります。

<この記事を読むとわかること>
  • 速いタンギングがバサバサする原因
  • バサバサを解消するための考え方
  • 速いタンギングを美しくする練習方法
目次

テンポを上げると、急に音がバサバサする

 ある生徒さんはダブルタンギングを練習し始めています。かなり順調にきていたのですが、ある日のレッスンでテンポを上げると、音がバサバサになってきました。

 ちなみにシングルタンギングは綺麗にできていて、テンポがゆっくりの時はダブルタンギングでもバサバサ感は無く吹けていました。そしてタイミングが間に合っていないわけでもありませんでした。

 曲中でも、特にダブルタンギングが必要とされるのは速いタンギングが求められるシーンですよね。

 例えばオーケストラの作品で言えば、リムスキー・コルサコフの「シェエラザード」第4楽章。それほど速くはありませんがビゼーの「カルメン前奏曲」あたりもダブルタンギングを使います(シングルで吹ける人はすごい!)。

リムスキー・コルサコフ「シェエラザード」第4楽章より[V]

 こういう時、まだまだ練習が必要だ!鍛錬が足りないんだ!と、ついそのままのテンポで「頑張り」続けてしまうかもしれませんが、一旦冷静になってみましょう。

  • タンギングがバサバサしているその音やフレーズをゆっくり吹いてみる。
  • タンギングを止めて、その音を伸ばしたり、フレーズならスラーにして吹いてみる。

…こういった検証をしてみて、今うまくいっていない本当の原因は何なのかを考えてみて欲しいのです。

原因は「舌」ではなく「息」かもしれない

 タンギングがうまくいかないと、「舌の問題」と考えがちです。

 もちろん舌の位置や力みが原因になることもありますが、その前に確認したいのが「息」です。タンギングは舌だけで音を作っているわけではありません。きちんと鳴っている息の流れに、舌で区切りを入れている、と考えた方が分かりやすいです。

弦楽器の「弓」は、管楽器の「息」

 私はよく、管楽器の息を弦楽器の「弓」にたとえます。弦楽器は左手の指が正しく動いていても、弓がうまく弦を鳴らせていなければ、良い音にはなりません。そして管楽器も同じで、指や舌がどれだけ速く動いていても、その土台になる息が乱れていれば、音は綺麗に鳴りません。

 速い動きの場合、弦楽器の上級者は音が細かくなっても、弓のスピードや弦への当て良い音が出る状態でキープすることができます。しかし、速いパッセージになると弓の使い方まで速くなってしまい、きちんと鳴らなくなってしまう奏者も見かけます。

 管楽器でも当てはまります。テンポが上がった時に、良い音がでる時の息の状態をキープできなくなってしまうと、タンギングを頑張っても音は荒れてしまうのです。

 「速くタンギングしなくちゃ!→舌で頑張る・唇で息をまとめようとしてしまう→音が荒れる」という構図はもちろんあるものの、その根底には「そもそも土台の息が乱れている」という原因が隠れています。タンギングの技術的な問題の前に、「その音が綺麗に鳴る息で吹けているか」を観察することが、解決の第一歩なのです。

いったんタンギングをやめて、ロングトーンに戻る

 さて、速くタンギングをしようとして音がバサバサになってしまったら、まずタンギングするのをやめてみましょう。

 教室で普段生徒さんにしていただいている、ダブルタンギングの譜例をご覧ください。お手元に楽器があればぜひ吹いてみてください。

<譜例1>

 この譜例をできるだけ速く吹いてみます。音がバサバサになってしまっていると感じたら、この音をロングトーンしてみます。特に息のスピードに注意してよく自分の音を聴いてみましょう。良い感じで鳴っているようであれば、この時の息の感覚を覚えておきます。

 今度は、先ほどの譜例を下記のように逆にして吹いてみましょう。

<譜例2>

 最初の2拍で、その音にぴったりの息(量やスピード)を確認し、後の2拍のでも息をそのまま保ち、素早く、でも軽く、タンギングを入れてみましょう。

 最初に吹いた時と比べて、タンギングをした時の音の質はどう変化しましたか?

速いタンギングでも、息まで速くする必要はない

 今回のことは、舌を速く動かすダブルタンギングだけの話ではありません。指を速く動かそうとした時にも、息は速くなってしまう傾向にあります。速いパッセージ、速いトリルの時は、息まで速くなりがちです。

 つまり、舌にしても指にしても、速く動かそうとすると息まで頑張ってしまうのが、人間の自然な反応なのです。冒頭の譜例(シェエラザード)のような、速い指×速い舌の組み合わせは特に大変です。

 ですが、そういうものなのだと分かっていれば、「タンギングの音がバサバサだ」と気づいた時、次のあなたの行動を変えることができます。

「今速く動かさねばならないのは舌だけであって、息まで速くする必要はないんだ…」

 そう思う自分がいれば、少し冷静になれますよね。息のスピードをコントロールする自分と、舌や指をコントロールする自分を切り離すようなイメージ。最初は難しいですが、タンギングをしないで吹いてみて息の制御を確認したり、テンポを落としてそれぞれの機能を確認することを怠らずに、「とにかく頑張る!」を卒業しましょう。

まとめ:うまくいかない時は、一つ前に戻ってみる

 速いタンギングが上手くいかない時、ひたすらダブルタンギングの練習をすれば出来るようになるかというと、そうではありません。舌の筋肉の鍛え方が足りないと思って時間をかけるまえに、音の土台である「息」にまず目を向けてみましょう。

 タンギングがうまくいっていない音をまず伸ばしてみる、タンギングが多く出てくるフレーズなら、全てスラーにしてみる。そうして、自分の音色にどんな変化があるかをしっかり観察してみてください。

今日試して欲しいこと

①いつも音が荒れる速さでタンギングしてみる。

②同じ音・フレーズをロングトーンまたはスラーで吹いて、良い音が鳴る息を探す。

③その息の感覚を変えないまま、もう一度タンギングを入れる。

チェックして欲しいのは、タンギングを入れた瞬間、息のスピードや音色が変わっていないか?です。

タンギングがうまくいかないから、舌をもっと練習する。高音が出ないから、もっと頑張って吹く。
フルートには、うまくいかない時ほど「もっと頑張る」方向へ進んでしまうことがあります。

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