フルートは息をたくさん使う楽器であるとよく言われますし、私もそう思っていました。実際、他の木管楽器や金管楽器のように息が全て管の中に入るのではなく、歌口の外に息が逃げていくため、長いフレーズを吹き続けるのは苦手な楽器です。
しかし、長年フルートを吹きレッスンをする中で、本当にたくさんの息が必要なのか?と思うようになりました。足部管の端まで息を届ける必要はあるのでしょうか?
- フルートは本当に「たくさんの息」が必要なのか
- 息を使いすぎるとかえって吹きにくくなる理由
- 自分の音に合った息の量・スピードを見つける方法
私も「管の先まで息を届ける」つもりで吹いていた

学生の頃の私はとにかくフルートを頑張って吹いていました。歌口に一生懸命息を集め、息を足部管の端まで息を届けようとしていました。
大きな音で、遠くまで届くように吹くことを求められていたので、今よりもたくさん息を使って吹いていました。全開のフルコンサートピアノにも負けないように、吹奏楽やオケでも埋もれないように、もっと鳴らさないと…と思っていたのです。
レッスンをしていても、音を飛ばそう、鳴らそうとして息をたくさん使っている生徒さんは多いです。しかし、そんな生徒さんは
- 息が続かない
- 音が柔らかくならない
- 音がバサバサしてしまう
…こんなお悩みを抱えていることがあります。
もしあなたも上記のようなお悩みがあるのであれば、この先のお話が解決のヒントになるかもしれません。
でも、管の中には「すでに空気がある」
さて、フルートの歌口に息を吹き付けた時、息はどうなっているのでしょう。歌口のエッジに当たった息のビームは、素早くエッジの上下を行ったりきたりしています。多少の息が管の中に入りますが、その息はフルートのどこまで届くのでしょうか?

歌口に息を当てることで、その場所にある空気、そして管の中の空気に働きかけ、振動を生み出しています。そう考えると、「足部管の端まで自分の息を送り込まなくちゃ」と頑張る必要はありません。必要なのは、目の前にすでにある空気を、音がよく鳴るように動かすことです。

「たくさん吹く」と、かえって鳴らなくなることもある

一時期、海外の先生のマスタークラスを受けたり聴講していたのですが、よく日本人の生徒が言われていたのが「吹きすぎ」でした。そんなにびゅんびゅん吹かなくていい、と言われている日本の音大生が多いのです。私もその一人でした。
音が思うように鳴らなかったり、もっと鳴らしたいと思った時、人はつい息を増やしたくなります。
特に鳴りにくい高音域や、意外と難しい中音域、きれいにタンギングするのが難しい音で、息を足してしまいがちです。しかし、息を頑張りすぎることでかえって演奏に支障をきたす場合もあります。
まず頑張って吹こうと思うと、喉や胸の辺り、人によっては肩や首にも力みが出ます。当然そういった力みは、繊細に使いたい唇や舌にも伝わっていきます。その結果、音が硬くなったり、息が続かなくなったり、必要以上に頑張り続けないと吹けない、という状況になっていきます。
フルートに必要な息の量やスピードは音によって異なります。比較的たくさん息を送って良い音もあれば、あまりたくさんの息を送ると裏返ってしまう音もあります。比較的速い息を好む音もあれば、できるだけ遅くて太い息を好む音もあります。もちろんこれらの中間も。
普段の練習は、このような各音の性格を知るための大事な時間なのです。
「どれだけ息を使うか」より、「どう反応しているか」を観察する
自分の音を変えたい、もっと良い音にしたい。そう思った時、「良い音をたくさん聴いてイメージを持とう」とか、「良い音だなと思う音で吹く奏者の吹き方を真似しよう」とか、「良い先生に習おう」と考えるかもしれません。
どれも手段として間違ってはいませんが、まず根本に必要なのは「観察力」です。自分の音をよく聴きながら、今の息が本当にベストなのかを見つめ直しましょう。
- 今の自分の息はこの音に合っている?
- 前後の音と比べて音の質が変わっている?
- 音立ち上がりは?音の広がりは?
- 身体のどこかに力が入りすぎていない?
- 息は苦しくない?
試しに今よりも息の量やスピードを増減してみて、また上記のようなことを観察します。そして目の前の空気を動かすだけ、という意識にしてみましょう。思ったより息を使わなくても出る音もあったのではないでしょうか。
「これくらい吹かないと出ない」という自分の思い込みを一旦置いておいて、自分の息と音の関係を冷静に見つめてみてほしいのです。
まとめ:息が必要ないのではなく、「必要以上に押し込まなくてもいい」
フルートは確かに息を使う楽器です。でも、よく響かせるためにはその分息がたくさんいる、という訳ではありません。必要なのは「たくさんの息」ではなく、「その音その音に合った息」なのです。
今よりも良い音にしたいと思った時、「もっと吹く」という「足し算」ばかりではなく、時には「引き算」的な思考も必要です。私は実際に多くの人をレッスンしていて、「足し算」よりも「引き算」が必要な人の方が多いと感じています。
私自身も、大学時代までにたくさん付けすぎてしまった鎧を、一つ一つ外していくような感覚で今の演奏に辿り着きました。
ぜひ、フルートの中にもあなたの目の前にも空気がすでにあることを忘れず、目の前の空気に働きかけるつもりで吹いてみてください。
今日試してみてほしいこと
同じ音を、息の量を変えて3回吹いてみましょう。
普通に吹く。次に「いつもよりたくさん吹く」。最後に「こんなに少なくて大丈夫?」と思うくらい減らしてみる。
その3つで、音量・響き・音色・息の持ち・身体の力みを比較してみましょう。一番少ない息を探すのではなく、「この音が一番気持ちよく鳴る」と感じるポイントを探してみてください。


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