息が上手く吸えない…たくさん吸ったつもりなのに苦しい…
息が持たないのはやっぱり吸えてないからだ…
吹奏楽部や個人レッスンでも、息が持たない時には「もっと吸って」と指導されることが多いですが、実はそれが苦しい原因だったのです。
- 呼吸のメカニズム(残気量)について
- より多くの息を吸って、長く息をもたせるコツ
「もっと吸って」が吸えない原因かも

フルートはとにかく苦しい楽器です。特に始めたばかりの頃は、音を出すのに息を浪費してしまうため、2〜3秒伸ばすのがやっと…という人も少なくありません。ある程度上達してきても、もっと伸ばしたいのに伸ばせない…という場面は多々あります。
そんな時、「もっと吸って」と言われたり、「もっと吸わなくちゃ」と自分で頑張ったりすることがあります。
しかし思うように吸えず、自分は呼吸が下手なんだ…腹式呼吸ができていないんだ…と落ち込んでしまうかもしれません。そしてもっとたくさん吸おう!と頑張ってしまう。
私もかつてはそんな悩みを抱えていました。吸おうとしているのに吸えない。長いフレーズでは息を節約せざるを得ない…。
今思うと、とにかく「吸う」ことばかりを考えていたことが、吸えない原因だったのだと分かります。呼吸のメカニズムを考えると、吸うためには準備が必要なのです。
呼吸のメカニズム

呼吸筋などについては別の記事に記載していますので、この記事の最後にご紹介するとして、ここではたくさん吸うための考え方の基本をお話しします。
「呼吸」は「吐いて吸う」と書く
「呼吸」は書いて字の如く、「呼(=吐く)」「吸」と書きます。吐いて吸う、なのです。楽器を吹いていると、「音を出す前に吸う」のが習慣になりますが、本当はその前に「吐いて息を捨てる」という一手間が必要です。
何故かというと、楽器演奏での呼吸は通常時の呼吸とは異なり、かなり深い呼吸が必要だからです。
実は肺には空気がかなり残っている
普段から肺が空っぽになることは決してありません(潰れてしまうので)。普通に呼吸していても、実は多くの空気が残っています。だから「もっと吸おう」としても、入るスペースが実は少ないのです。つまり、吸えないのではなく、まだ肺の中に空気が残っている状態___これが「吸えない」の正体です。
機能的残気量・残気量
ここは少し専門的なお話になるので、難しく感じる方は図だけ眺めていただき、次のセクションへ飛んでいただいてもOKです。
一般的な肺の容量は、成人男性では3,400〜4,500ml、成人女性では2,500〜3,500ml。通常時の呼吸では一回の換気量がおよそ500mlと言われています。例えば女性で全肺気量が3,000mlの人であれば、一呼吸しても2,500mlの空気は肺に残ったままということになります。この2,500mlを「機能的残気量」といいます。意外と残っていますね。

肺活量の検査等で最大限息を吐き切った時でも、1,000ml程度の空気が肺に残っています。これを「残気量」といいます。管楽器の演奏時に、長いフレーズを吹いている時はこの状態に近いのではないかと思います。ちなみに肺活量とは、この最大限息を吐いた時の呼気の量を指します。

機能的残気量は、正確には「残気量+予備呼気」です。予備呼気とは、通常時の呼気量にプラスしてまだ吐くことができる余力の呼気のこと。アスリートやプロの管楽器奏者など、肺活量が大きい人はこの予備呼気量が多いので、機能的残気量も3,000〜4,000ml以上となります。
ここで押さえておきたいのは、通常時の呼吸では2,500mlもの空気が肺に残っていること。そのまま演奏に入ってしまうと、全肺気量が3,000mlの人の場合、あと500mlしか新たに息を吸うことができません。500mlしか換気できない状態で管楽器を吹くと、冒頭のような「吸えない、持たない」という状況に陥ってしまうのです。

ちなみに年齢とともに肺の機能が低下すると、機能的残気量や残気量は増えてしまいます。これにより呼吸が浅くなり、さまざまな不調を生み出すことに…。しかし管楽器の演奏などを続けることにより、肺の機能低下を防ぐことができるそうです!
肺に残った空気をしっかり減らせれば、通常時の何倍も吸える
演奏中はアスリート並みの深い呼吸を求められます。仮に全肺気量3,000mlの人が演奏に2,000mlくらい息を使いたいなら、肺に残った空気(残気量)が1,000ml位になるまでまずは吐くことが必要なのです。これを意識するだけで、通常時に500mlしか吸えなかった状態から、その4倍の息を新しく取り込み、使うことができるようになります。
つまり普段3秒しか伸ばせなかった人も、しっかり吐くことを意識できれば倍以上伸ばせるかもしれない___8秒くらいのロングトーンなら余裕でできるようになるかもしれません。
まとめ:長いフレーズに備えるなら、まず「吐く」
現代人は「吐く」が苦手になっています。スマホやパソコンで姿勢が悪くなっていたり、運動習慣が減っていたり、仕事やSNSでストレスを感じていたり…そういったことの積み重ねで、横隔膜の動きが悪くなっている人が多いです。
そしてフルートを「苦しい」前提で吹いていると、ついつい「吸う」ことばかりにフォーカスしてしまいます。しかし、それが吸えない原因なのです。
吸う前にまずしっかり吐いて肺の中の空気を減らし、一呼吸の換気量を大きくすることで、より多くの息を演奏に使うことができるようになります。
長いフレーズを吹く前には、口からでも鼻からでも良いので、まず意識的に息を吐いて備えることを習慣にしましょう。
今日試してみて欲しいこと
ロングトーンを始める前に、まず一度しっかり息を吐いてみる。そして自然に吸ってから吹いてみてください。「もっと吸う」ではなく「もっと吐く」。それだけで、息の入り方が変わるかもしれません。
より詳しく知りたい方へ
呼吸筋については以下の記事で詳しく解説していますので、より詳しく知りたい方は参考になさってください。


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