【フルートの思い込み】音程が高いなら頭部管をどんどん抜く?

自分のピッチが高いから、という理由で頭部管を1センチ以上抜いている__

逆に低いからと、頭部管を目一杯入れている__

あるいは、

チューナーのゼロに合うように毎回頭部管の抜き具合を変えている__

 そんな方はぜひこの記事をお読みください。頭部管の抜きすぎ・入れすぎ、毎回違うということには、実は演奏における根本的な問題が潜んでいるかもしれません。

<この記事を読むとわかること>
  • 頭部管を極端に抜いたり入れたりする前に確認したいこと
  • 頭部管の位置と、息・音程・音色の関係
  • チューナーを「音程合わせ」だけでなく奏法チェックに使う方法
目次

「肝心なところでピッチが下がる、息が持たない」というご相談

 吹奏楽で吹いている方から、最近「フレーズの終わりでpやppにしなければならない場面で、とにかくピッチが下がってしまう」というご相談を受けていました。また、息がもたない…ということでも常に悩んでいるご様子。

 デクレッシェンドの練習は殆どしたことがないということでしたので、基礎練習の際に取り入れてみたり、呼吸に問題があると予想し、呼吸のメカニズムについてお話しして、ロングトーンを意識的に行ったりしてきました。

 それらのアプローチも必要なことではありました。しかしなかなか根本的解決に至らず、吹奏楽の練習があるたびに「ここが下がってしまう」「ここで息が足りなくなる」と悩んでいらっしゃいました。

頭部管を1.5センチくらい抜いていた

 ある日ふと思い立って、その方の頭部管の位置をチェックしました。すると、1.5センチほど抜いていることが判明したのです。

頭部管を1.5センチ抜いてしまった様子

 これがどれくらいとんでもない事かというと、通常よりも1/4音(半音の半分)くらい全体のピッチが下がってしまっているかもしれない、という事です。

 この方はスマホアプリでのピッチ確認を欠かしません。中音域の後半から高音域にかけての音が、常に+30セントほどになってしまう、とのこと。とにかく上がってしまうので、「まだ高い、まだ高い…」と抜いているうちに今の1.5センチ程まで来てしまったようでした。

 私の中で「抜きすぎた頭部管」と、「弱奏時にピッチが下がる」・「息がもたない」というお悩みがバチっと結びついた瞬間でした。

 頭部管を抜きすぎたことは原因ではありません。抜かざるを得なくなっていった「息の使い方の変化」が根本的な原因です。

頭部管には「いつもの位置」がある

設計時の想定

 フルートの頭部管をどれくらい抜くか、ということは、そのフルートが作られた時にある程度決まっています。

 多くのメーカーのフルートが、5〜7ミリ程度抜いた状態で、442HzのAが鳴るように設計されています。ピッコロならさらに範囲は小さく、2〜3ミリくらい抜くのが一般的です。

標準的な頭部管の抜き方はこれくらい

*1980年台以前のフルートでは、440HzのAが鳴る設計になっているものがありますのでご注意ください

 まずは、お使いの楽器でメーカーなどが想定している位置を確認してみましょう。
 そこから大きく外れた位置でないとピッチが合わない場合は、「自分はこういうものだから」で済ませず、奏法や楽器の状態を確認するきっかけにしてみてください。

やむなく極端な調整に…

 しかし演奏をしていると「何だか高くなりやすい…」「いつも下がってしまう」ということに気付いてしまうことがあります。特に吹奏楽やオーケストラなどで、自分のピッチが周りと合わないことはとても気になります。

 すると、仕方なく1センチ以上抜いたり、5ミリよりも入れたりせざるを得なくなってしまうのです。

 私も吹奏楽部にいたころは、チューナーの針が示す位置によって毎回頭部管の抜き方が前後していたことを覚えています(私が学生の頃は音楽室に冷暖房があれば良い方でしたので、そのせいもあったと思いますが笑)。特に本番当日はなんだか高くなってしまって、いつもより抜く…なんてこともありました。

技術が安定してくると、頭部管の位置は年中ほぼ同じ

 しかし今はどうかというと、頭部管の位置を変えるということは殆どありません。オーケストラで合奏前にチューニングをしますが、余程のことがなければ「いつもの抜き具合」から変えることはありません。

 なぜ変えずに済むのかというと、今はエアコンが効いていて、極端に演奏環境が変わることがないからということもありますが、一番の要因は吹き方がある程度安定したからだと思います。

極端な抜き方は、吹き方に問題があるサインかも

 「頭部管を1センチ以上抜かないと下がらない」、もしくは「5ミリよりも入れないと上がらない」という時、「合わないんだからしょうがない」で済ませてしまうと、他にも色々な問題を抱えることになってしまうかもしれません(もうすでに抱えていらっしゃるかも)。

 極端な抜き方をしないと合わないということは、すなわち奏法や頭部管の角度などに問題がある可能性があるのです。

息が持たない、フレーズ終わりなどでピッチが下がる時

 冒頭でお話しした方の例では、「息が持たない、フレーズ終わりなどでピッチが下がる」という問題が起きていました。

 この方の場合、基本的な息がかなり速く、ピッチが上がりやすい吹き方をされていました(実はこのことは以前から指摘していました)。高音域でのタンギングがかなり硬い音になってしまうという問題もあり、それも息の勢いが強すぎることから来ていました。

 ピッチが上がるので頭部管を極端に抜いていましたが、フレーズの終わりなどで息の勢いが落ち着くと、楽器のチューニングはそもそも低いのでピッチが下がってしまっていたのです。息が持たないのは、息の使い方が速いという根本的原因からです。

音色が暗い、大きな音が出ない

 別の例では「音色が暗い、大きな音が出ない」というお悩みのある方の場合。このケースでは頭部管を入れすぎていることが多く、根本的な原因は息を歌口の中に入れすぎている(逃げる息が少ない)か、そもそも頭部管のセッティングがかなり内向きになっていることだったりします。

ピッコロのピッチが上がる、音がバサバサする

 ピッコロを吹く吹奏楽部の生徒が、かなり頭部管を抜いているケースに出会ったこともあります。とにかく下がらない、そして音がバサバサするとのこと。ヤマハのピッコロを使っていたのですが、その生徒は頭部管と胴部管についている印を合わせて吹いていました。

 その生徒の胴部管の持ち方では、その位置だと頭部管がかなり外向きになってしまい、息がかなり逃げるセッティングでした。それでピッチが上がって、音もバサバサしてしまっていたのです。

解決のために

まずは設計時に想定された抜き具合に

 色々起こっている問題を解決するために、まずは頭部管の抜き具合を標準の範囲内に戻すことから始めましょう。

 ちょうど良い息遣い、ちょうど良い頭部管の角度で吹けるようになれば、頭部管を極端に抜いたり入れたりする必要はなくなります。そして毎回チューナーとにらめっこしてその都度チューニングを変える必要もなくなってきます。

*頭部管の反射板の位置がズレていると、そもそも良いピッチ・音色で吹くことが難しくなりますので、掃除棒の端についている刻みを使ってチェックしましょう(下図参照)

*もし特定の音が上がる・きちんと鳴っていない場合は、胴部管以下のキィの調整が合っていないことがあります、専門家に見てもらいましょう

チューナーをうまく活用して、息を整えよう

 頭部管の抜き具合を標準の範囲内に戻しただけでは、またピッチが上がりがち・下がりがちになります。ここでチューナーの出番です。

 私は普段、チューナーの針を盲信しないように!と言っています。チューナーに合わせることを目的にして、音色を犠牲にして欲しくないからです。しかし、今回はチューナーが大変役立つのです。

 反射板の位置や楽器の調整に問題がないことを確認し、標準の範囲内に頭部管をセッティングしたら、チューナーを見ながら中音域を練習してみましょう。

ピッチが上がる時は

 この時にピッチが上がるようなら、できるだけチューナーの針がゼロ付近になるように息の吐き方をゆっくりにしましょう。音がバサバサしているようなら、頭部管の角度が外を向きすぎている可能性もありますので、1ミリずつ頭部管の角度を内側に動かしながら、音色の変化を観察します。良い角度が見つかると、しっとりした音色になる、などの効果があることもあります。

ピッチが下がる時は

 ピッチが下がる時は、できるだけチューナーの針がゼロ付近になるように息を少し速く吐いてみましょう。音が詰まる・伸びていかないような感覚があったり、音量が出ない場合は、頭部管の角度が内を向きすぎている可能性もあります。バサバサしすぎない程度に、1ミリずつ頭部管の角度を外側に動かしてみます。

 多少の空気音はするものなので、ツルッとした音にしすぎないことも大切です。

高音域のピッチが多少上がるのは許容範囲

 高音域に関しては多少ピッチが上がるものです。どんな管楽器にもスケールの癖はあるものですので、あまり神経質にならないことも大切です。

 fで吹いているつもりがないのに、常に+30〜40セントまで上がってしまう、音色も開きすぎているようであれば、「ピッチが上がる時は」を参考に、息を使いすぎずに高音域を吹けるように練習をする必要があるかもしれません。

 このように息の量やスピード、頭部管の角度を少しずつ変えながら、「ピッチだけでなく音色がどう変化するか」を観察してみましょう。

 チューナーの針をゼロにすることだけが目的ではありません。音色が自然で、身体にも無理がなく、そのうえでピッチも安定するポイントを探していきましょう。

頭部管の抜き具合を変えたくなる時は

 日によって・その時によって、頭部管の抜き具合を変えたくなってしまう、変えてしまっているという方は、息の調子や頭部管の角度が都度変わってしまっているのかもしれません。

 その場所が暑い・寒いなど環境が大きく違う場合はもちろんチューニングを変える必要がありますが、そうでない限りあまりチューニングはいじりません。チューニングを変えたくなる時は、いつもの自分と何かが変わってしまっているかもしれない、というサインです。

 頭部管の角度、持ち方がいつもと違っていないかを見たり、息の送り方が変わっていないかを観察しましょう。特に大事な本番の日などは、緊張して呼吸が速くなったり、深く吸えなくなったりするので、いつもと息が変わってしまいがちです。

大事な日こそ、チューニングはいつも通りにしておきましょう。もし調子が悪ければいつもの自分と何が変わっているのかを考えることができ、調子を整えるためにどうすれば良いのかが見えてきます。

まとめ

 ピッチが高ければ頭部管を抜く。低ければ入れる。
 もちろん頭部管には、気温や演奏環境などに合わせて楽器全体のピッチを調整する役割があります。
でも、いつも極端な位置にしなければピッチが合わないのであれば、「自分は高くなりやすいから」で終わらせず、その理由を一度探してみてください。

 息の使い方、頭部管の角度、楽器の状態。そのどこかに、音程だけではなく「息が続かない」「音がバサバサする」「弱奏で音程が落ちる」といった、別の悩みにつながる原因が隠れているかもしれません。

 チューニングは、チューナーの針をゼロにする作業ではありません。自分のいつものセッティングと吹き方を基準にして、音色とピッチの両方が自然に安定する場所を探していきましょう。

 吹奏楽の場合は慣例的にB♭でチューニングを行いますが、実はそのB♭チューニングがフルート吹きには難ありかもしれないのです。B♭チューニングにお悩みの方はこちらの記事もお読みください。

今日試してほしいこと

 いつも通りに頭部管をセッティングして、中音域の吹きやすい音を吹いてみましょう。そしてチューナーを見ながら、ほんの少しだけ息の使い方を変えてみてください。

 そのとき、音程だけでなく、音色・響き・身体の力み・息の持ちがどう変化するかを観察しましょう。

 そして、「チューナーをゼロにするにはどう吹けばいい?」ではなく、「自分が自然に吹いたとき、良い音色と安定したピッチが両立する場所はどこ?」を探してみてください。

頭部管の位置に限らず、フルートを吹いていると、いつの間にか「こうするもの」と思い込んでいることがあります。でも、「なぜ今この音程になるんだろう?」と少し立ち止まって観察してみると、今までとは違う解決方法が見つかるかもしれません。自分に合った吹き方を見つけながら、フルートをもっと自由に演奏したい方へ、メルマガでもこんなお話をお届けしています。

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