最高音Cが出ない。
何度吹いても当たらないので、息を強くしたり、唇をぎゅっと締めたり、タンギングを頑張ったり……。
そんな経験はありませんか?
フルートの一般的な運指表に載っている最高音は、第4オクターブのCです。この音がなかなか出せない、あるいは出る日と出ない日がある、という方もいらっしゃいます。
でも、最高音Cが出ない原因は、必ずしも息の勢いやアンブシュアの作り方が足りないからではありません。むしろ、Cを出そうとして頑張りすぎることが、音を出しにくくしている場合もあります。
今回は、レッスンでよく見られる6つの原因と、症状に合わせて試してほしい5つの練習方法をご紹介します。
- 最高音Cが出ないときに起こりやすい6つの問題
- 自分の症状に合った5つの練習方法
- 高音域を頑張りすぎず、安定して鳴らすための考え方
最高音が当たらない理由
まず、これまでのレッスン経験から、最高音がなかなか当たらない時に起こっていることが多い状況をいくつか挙げてみます。
理由①:唇を作りすぎ

「高音域のためのアンブシュア(唇)」を作ろうとし過ぎているケースです。特に苦手な音になると、唇がぎゅーっと力む方が多いです。
私がレッスンでよく実演するのが、唇を意識的に作り直さずに、低音域から高音域まで吹くというものです。音域によって唇の状態に変化が起こることはありますが、高音のたびに唇をぎゅっと締めたり、大きく形を変えたりする必要はありません。
なので、高い音が出にくいのは「アンブシュアのせい」というよりも、「アンブシュアを作ろうとし過ぎているせい」かもしれません。アンブシュアが固くなったり、閉じ過ぎてしまって息の出口を妨げると、高い音が余計に出にくくなってしまうのです。
理由②:タンギング頑張り過ぎ
高音域の音を「当てる」ためには、強くタンギングをしないといけない、と思い込んでしまっているケースもあります。
タンギングの役割は、あくまでも音の鳴り始めを整えること。タンギングをしたからといって、息が出ていなければその音が鳴ることはありません。
タンギングの時に必要以上に舌を力ませたり、動きが大きくなったりすることにより、息の流れを妨げてしまっていることがあるのです。
理由③:歌口の塞ぎ過ぎ

ついつい難しい音になると、楽器を持つ手を自分の方へ少し傾けて、唇に歌口のエッジを近づけていませんか?自覚のある方もいれば、ない方もいらっしゃいます。
歌口を下唇で「どれくらい塞ぐか」__別の言い方をすれば、「どれくらい開けておくのか」というのは、健康的な音が出るかどうかということにおいてかなり重要です。
エッジを近づけた方が楽に音が出やすいと感じるかもしれません。楽器によってはそれでも高音域がある程度出せることもあります。しかし近づけたことにより歌口が塞がりすぎると、音がつぶれたり、ピッチが異様に下がったり、暗い音になったりと、フルートの良い部分が出せなくなってしまうのです。
良い音で高音域を吹きたいのなら、エッジを近づけず、歌口の開きを十分に保って吹けるように、「息」を育てることが重要です。
理由④:息の使いすぎ
最高音域を吹くには確かに息のスピードがある程度必要になります。しかし、フルートのキャパシティを超える息の量を吹きつけてしまうと、音にならずにただ息が逃げるだけになってしまいます。
最高音域に苦手意識がある方は、この辺りの音符を見るとほとんど反射的に息を激増させてしまっていることがあります。
息を吐くことはもちろん大切ですが、その吐き方・使い方も大切なのです。
理由⑤:楽器の支え方の問題

第3オクターブの♭シから上になると、右手の小指を離すことになります(H足部管でのHigh-Cではギズモを押さえますが)。それゆえに、もともと支えが不安定な場合、かろうじてキィを触っている指で楽器を握ってしまいがちです。
手指に力が入ると、その力みが実は呼吸を妨げてしまうことがあります。高音域で呼吸が止まってしまうとスムーズに音をだすのが難しくなりますので、普段から安定して楽器を支えられているかということが、ここでも大切になります。
理由⑥:身体の力み
一つ前のお話と関連して、「頑張ろう!」とすると上体全体が硬く、力んでしまう方もいらっしゃいます。指から来ていることもありますし、喉の辺りが緊張することから周辺の筋肉にも影響していることもあるようです。
フルートの最高音域は確かに難しいかもしれませんが、中音域と大幅に違うわけではありません。必要以上に構えて吹くのをやめるだけで、吹きやすくなることもあります。
解決のヒント5選
それでは、最高音が出ないという方へのヒントを5つご紹介します。全てを試すというより、ご自分の状態に合わせて選んでいただくのがオススメです。
【最高音Cがくるとつい緊張してしまう人】▶︎朝イチでさりげなく吹いてみる

下の音から順に練習して、最後に最高音域を練習するという人も多いかもしれませんが、練習が進むにつれ、必要のない力みが蓄積していくこともあります。
「これくらい唇が緩んでいても出るんだ」ということを体験するのために、楽器を組み立てたら最初にCを吹く、というチャレンジをしてみましょう。
ただし、まずは無理なく吹ける状態で、短く軽く試してみましょう。当たらなければ何度も力任せに繰り返す必要はありません。
【最高音C周辺になると楽器を近づけたくなる人】▶︎右手を前に出す
高い音が来ると、無意識に右手が自分の方に近づいたり、楽器が手前に傾いたりしていることがあります。歌口のエッジを近づけた方が出やすい気がする、という心理の現れですが、それが響きにくい原因かもしれません。
右手を引きつけずに、むしろ少し前に出して楽器を離すようにしてみましょう。息が歌口に潜ってCが出なくなってしまっていた人は、これだけで出るようになることがあります。
【最高音C周辺で楽器が揺れてしまう人】▶︎GからCへ跳躍
Cの運指は確かに不安定で、周辺の指遣いも複雑ですよね。そこで、Cと運指が似ている第3オクターブのGの運指から、Cに移る練習をしてみましょう。Gの時に右手の小指はできるだけ「乗せているだけ」という軽い状態にしておき、息のビームをしっかり伸ばしてCに移ってみます。
楽器が揺れなくなると、Cも安定して当たりやすくなります。まずはこの動きができるように、普段からバランスをとって楽器を構えるようにしてみましょう。
【最高音Cを吹くときに唇が閉じてしまう人】▶︎ノンタンギング
高音域のためのアンブシュアを作りすぎてしまう人は、まず「息」を整えることから始めましょう。タンギングに力が入りすぎていたり、舌の上顎からの距離が遠すぎることも原因だったりします。
まずは高音域を、タンギングせずに短く吹く練習をしてみましょう。アンブシュアをほったらかしにして、ひたすら息に集中します。
その際に、舌がどこでどうしているかも観察しましょう。おすすめは「ヒー」という時の舌の状態。実際に言ってみると、上顎に舌が近づくのが分かるはずです。これくらい息の通り道を狭くすると、効率よく息のスピードを上げることができます。
ノンタンギングの練習は下記を参考にしてください。

【音を出すまでにあれこれ考えてしまう人】▶︎壁ドン
Cが普段からほとんど当たらない、という人でも出ることがあるのがこの練習です(プレイヤーがエラーの場合は「YouTubeで動画を見る」をタップすると見られます)。
壁や寄りかかれるテーブルなどを見つけてください。寄りかかった状態で楽器を構え、立ち上がると同時にブレス→高音域の音を吹く、という動きを繰り返します。いきなりCではなく、ほどほどの音から試してみてください。
詳しいやり方はこちらを参照してください。良い音を出そうとせず、余計な準備をしないで吹くための練習です。
まとめ
最高音Cが出ないと、つい「もっと息を強く」「もっと唇を締めて」「もっとしっかりタンギングを」と考えてしまいがちです。
でも、レッスンをしていると、頑張りすぎていることが原因で高音域が出にくくなっている方によく出会います。
唇を作りすぎていないか。
タンギングに力が入りすぎていないか。
歌口を塞ぎすぎていないか。
息を必要以上に使っていないか。
楽器の支え方や身体の力みに問題はないか。
最高音Cが当たらないときは、まずこのあたりを観察してみてください。
そして、今回ご紹介した5つの練習方法の中から、自分の状態に合いそうなものを試してみましょう。
大切なのは、最高音Cを出すために特別な準備をたくさんすることではありません。普段の音域でできていることを、最高音Cでもできるだけ邪魔せずに続けること。「もっと頑張らなければ」と思っていたところから、少し力を抜いてみる。
それだけで、今まで難しかった音が意外とすんなり鳴ることもあります。最高音Cを、特別な音として怖がりすぎずに吹けるようになっていきたいですね。
フルートを吹いていると、いつの間にか「こう吹くもの」と思い込んでいることがあります。でも、その意味を少し掘り下げたり、実際に自分の音を聴き比べたりすると、今までとは違う選択肢が見えてくるかもしれません。
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