【フルートの思い込み】厚い唇だから吹けない、は本当?〜厚い人にオススメの当て方〜

 唇が厚い人はフルートには向いていない。そんな話を聞いたことはありませんか?私も昔はそう信じていました。周りの人と同じように当てても音が出ない。だから息を無理やり下へ曲げて吹いていました。

 でも今なら分かります。悪かったのは唇ではありません。基本的な考え方が違っていて、「当て方」に工夫が必要だったのです。「唇厚め民」が快適にフルートを演奏するためのヒントをお届けします!

<この記事を読むと分かること>
  • 唇が厚い人がフルートに向かないと言われていた理由
  • フルートを当てる時の4つの原則
  • 唇厚めの人におすすめの当て方
目次

唇が厚い人はフルート吹けない?

 20年以上前、私が吹奏楽部でフルートを始めた頃は、「唇が厚い人にはフルートは向いていない」という噂のようなものがありました。

 確かに周りの先輩や同期の唇は私よりも薄く見えました(実際にはそんなに変わらなかったのかもしれませんが)。そうか、だからなんだか良い音が出せないのかな…。そう思って落ち込んだものです。

 当時はインターネットにもあまり情報がありませんでしたので、自分で試行錯誤するしかありませんでした。しかし、音楽之友社から出ている三村園子さんの「うまくなろう!フルート」に、とても勇気の出ることが書かれていました。

私は唇が厚いほうなのでフルートには向かないということになるわけで…しかしフルートを吹きたかった私は思案の末、理想的と言われる唇の薄いタイプと同じような位置に歌口を当てれば!?と思いつき、私なりの当て方が生まれました。今では唇が厚いことで歌口が唇に多く当たり、すべり落ちにくいのでかえって都合がいいとさえ思っています。

三村園子著「うまくなろう!フルート」(音楽之友社)より

 この三村先生の言葉により、「唇が厚い=向いていない」という思い込みが崩れました。いい音が出るか出ないかは、唇の厚みで左右されるものではないんだと考えられるようになったのです。そして私にも吹けるかもしれないと。

 唇が厚い人が向いていないと言われていたのは、厚い人が薄い人のやり方で吹こうとしていたことにより、吹きにくくなっていたからと考えられます。

 現在私の教室にはいろいろな唇の生徒さんがいますが、みなさんそれぞれに吹きやすい場所を見つけ、演奏ができています。

フルートを当てる時の4原則

①自分の息は曲げない

 私が常日頃お伝えしていることの一つに、「自分を楽器に合わせず、楽器を自分に合わせる」ということがあります。フルートのリッププレートをどこに当てるか、という問題にも、このルールが当てはまります。

 唇の厚さや形はもちろん、上下の顎の位置関係、歯並びもみんな違います。自分は真正面に息を吐いているつもりでも、実はちょっと曲がっているという場合もあります。

 フルートは息そのもので音を操る楽器です(他の楽器もそうではありますが、息がそのままリードの代わりとなって音に変わる楽器は、フルートのようなエアリード楽器に限られます)。強弱、ピッチ、音の表情…あらゆるものを息で調整します。その時に初めて、息の方向や幅などをコントロールするために、唇の助けを借りる必要が出てきます。

 しかし「音を出す」だけのためにすでに唇が何か仕事をしているという状態だと、さらに何か調整したいと思った時に、思い通りに唇を使うことができません。

 なのでまず第一に、自分が何も考えずにただ吹いた時の自然な息をそのまま使う、ということを大切にしてみましょう。上にも下にも、右にも左にも曲げない。ただ吹く。そしてその息で音が鳴るように楽器の位置を合わせる。これが大原則です。

②息は唇の真ん中から出るとは限らない

 息が唇のど真ん中から出る人は実は稀で、左右どちらかに寄る人が多いです。真ん中から吹かなくちゃ、と思っていることが障害になっている場合もあります。私のアパチュアはちょっと左ですし、生徒さんもいろいろです。

 上唇の真ん中が膨らんでいて、両唇を閉じると二手に分かれて息が出てしまう、という方もいらっしゃいます。この場合は最初のうち迷います…穴を左に寄せてみようとか、右に寄せてみようとか、いろいろな試行錯誤をするケースもあります。しかしこういった唇の人の方が、むしろ中心部分にアパチュアができて落ち着くこともあります。

 他の記事でもしつこく書いていますが、息の出口であるアパチュアは息を吐いた結果です。作ろうとして作るものではないので、楽器に合わせて穴を作るなど論外です!(笑)

 真ん中に穴を作ろうとせず、息を吐いて自然にできた穴をそのまま利用して吹きましょう。

②「唇のどこに当てるか」で位置を覚えない

 「リッププレートの当て方迷子」の記事をすでにお読みの方は繰り返しになってしまいますが、唇のどの辺に当てるか迷ってしまう、もしくはちょっとでもずれると音が出なくなる…こんな悩みをよく聞きます。私も同じ状況を経験しました。

 悩んでいた当時の私は、下唇のシワの位置を覚えていて、ひどい時は「このシワと歌口のここのキワが合うように…」なんて考えていました(笑)鏡がないと自信を持って合わせらませんでした。

 しかし一周回って気がついたのは、リッププレートの位置は実はそんなにシビアなものではないということ。「だいたいこの辺」で、息がいつも通り出ていれば大方吹けるものです。もしミリ単位で合わせないと不安、という状態なら、ぜひ「リッププレートの当て方迷子」の記事もお読みください(リンクをこの記事の最後に貼っています)。

 私が最近おすすめしているのは、下顎の窪みとリッププレートのカーブのフィット感と、上唇から歌口まで距離感で吹きやすい位置を覚えること。実際私がそのようにしているのですが、唇にリッププレートが当たる感覚を頼りに当てていた時よりも外れなくなりました。

③人と同じである必要は全くない

 「みんなが当てている位置に当てる→その位置で音が出るように息の方向を合わせる」という考え方で吹いていると、非常にコントロールが難しくなる場合があります。

 ①でも書いたように、唇の厚さや形はもちろん、上下の顎の位置関係、歯並びもみんな違う。ということは、当て方やリッププレートの位置も全員違います。

 私の最初の失敗は、当時周りの先輩たちの当て方を真似していたことです。それしか情報がないので仕方がないのですが、人が違えば当て方も変わる、ということを知っていたら、もう少し早く上達していたかも…と今は思います。

実は私、中学1年生のコンクールでいきなりピッコロデビューしています…。先輩たちがみんなやりたがらなかったからなのですが、独学で吹いていたピッコロが意外にも得意でした。もしかしたら誰も周りが吹いていなくて、変に真似する相手がいなかったからなのかも…なんて思います。

私がしているオススメの当て方

よくある当て方と問題点

 私が今までに見聞きしたことのある当て方は以下の二つです。いずれも唇が薄めの人であれば良いかもしれませんが、「唇厚め民」がこの当て方をしてしまうと演奏上の問題が起こりやすいです。その特徴や適さない理由も併せて記載します。

①下唇と顎の皮膚との境目に歌口の手前のエッジを合わせる

<問題点>

  • 歌口が息の出口から下方向に遠くなりやすい
  • 音を出すために息の方向をかなり下に向けなければならない
  • 歌口が半分以上ふさがってしまい、詰まったような音や暗い音になってしまうことも

②歌口を両唇で一旦ふさいで、外へくるっと戻す

<問題点>

  • 唇にリッププレートが乗っかるような感じになってしまう
  • 歌口を手前に傾けがちになり音色が暗くなりやすい
  • 顎にフィットしないので下唇が楽器を支えようとしてしまって、唇が震えてしまうことも

唇が厚めの人に試して欲しい当て方:「外から内」

 さて、上記の一般的な当て方がしっくりこない場合、あなたは唇が少し厚めなのかもしれません。でもご安心ください。下唇の厚みをクリアして当てる方法があります。

厚め民の当て方「外から内」の4ステップス

STEP
まず楽器を外(お客さん側)方向に倒して持つ

STEP
リッププレートの手前のカーブを、下顎のくぼみにフィットさせる

STEP
歌口の手前のエッジを、下唇の上の方に持ってくる(上唇からの距離を意識)

STEP
音が出るように楽器を手前に傾ける

 この当て方のポイントは、下唇の縦幅と奥行きをうまく収納できるということ。アパチュアから歌口が遠くなると吹きにくくなり、息を曲げなければならなくなります。適切な距離にするには、下唇と顎の皮膚との境目を基準にして位置を決めるのではなく、上唇(アパチュア)からの距離を基準にすべきなのです。

 また、唇に乗っかるだけの当て方になると、歌口が前方向に離れてしまいます。口輪筋にも要らぬ緊張を強いることになってしまいます。顎のくぼみを利用してフルート前後の距離を縮めることができれば、唇に無理をさせることなく演奏ができるようになります。

 これも一つの当て方にすぎず、あなたに合った当て方は他にもあるかもしれませんが、一般的な当て方ではうまくいかない場合に、一度は試してみていただきたい方法です。

まとめ

 唇が厚いことは問題ではありません。問題なのは、誰かに合った当て方を、自分にも当てはめようとしてしまうことです。

 良い音が出ない、コンディションが定まらない…そんな時、ついつい自分の唇や歯並びのせいにしたくなります。しかし、フルートの音を生み出すのは唇でも、歯でも、顎でもありません…「息」であるということを思い出しましょう。

 息がきちんと吐けていて、その息に楽器を合わせてあげれば、誰でも音を出すことができます。息が出る場所は真ん中とは限りません。自然にできた息、アパチュアに歌口の位置を合わせてあげれば、唇で頑張って息を曲げなくても楽に音を出すことができます。

 フルートは、あなたの息に合わせて構えていい楽器です。その視点を持つだけでも、きっと演奏はずっと楽になりますよ。

 リッププレートをミリ単位で合わせないと不安…少しでもずれると良い音が出ない…という方は、ぜひ「リッププレートの当て方迷子」の記事もお読みください!

今日試して欲しいこと

 ぜひ【厚め民の当て方「外から内」の4ステップス】を実践してみてください。下唇のどの辺りに歌口の手前のエッジを当てるかは、その人の唇の縦幅などによりますが、思っているよりかなり上の方に当てると簡単に音が出るケースが多いです。「無理に息を下へ曲げないで済む位置」**を探してみてください。

メルマガでは、今回のような「フルートへの思い込み」を変える、もう少し踏み込んだ話を書いています。奏法の正解を押し付けるのではなく、自分に合った吹き方を見つけるためのヒントをお届けしています。ご興味があればぜひご登録ください!

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