もっと吹いて!もっと大きな音で!と言われた経験が誰しもあると思います。そう言われた時、ほとんどの人が「もっと息を使おう」と思ったり、とにかく頑張ろうとしたりするものの、あまり良い結果にならないことが多いです。
フルート吹きが「もっと吹いて!」と言われた時、求められているのは単純な音量アップだけではないかもしれません。
- 「もっと吹いて!」の真意
- 大きく聞こえる音はどんな音か
- 音が小さく聞こえてしまう理由
- 「届く音」にするために必要なこと
「もっと吹いて」=音量?

もっと吹いて、と言われるシチュエーションは色々考えられます。吹奏楽やオーケストラの合奏や、ソロのレッスンでもあるかもしれません。
例えばご相談が多いのは吹奏楽。目の前の指揮者に「聞こえない!もっと吹いて!」と言われる場面。この時、求められているのは音量だけなのでしょうか?
フルートはそもそも大きく吹けない

フルートは、その発音原理的に他の管楽器より大きな音は出せません。特に吹奏楽やオーケストラで演奏している場合、どんなに頑張ってもトランペットより大きな音を出すことは不可能です。
「聞こえない!もっと吹いて!」と指示された場合、音量を増したくても限界があります。そこで、何故そう言われてしまうのか、そしてどうしたらもっと届く音になるのかを考えていきましょう。
頑張っているのに小さく聞こえてしまう原因は
フルートが「聞こえない!もっと吹いて!」と言われてしまうのは何故なのか?本当に音量が小さい場合もあります。その場合はもっと息をたくさん使えるように、呼吸を見直す必要があります。
ある程度音は出ているのに、そのように言われてしまったのなら、疑うべきは音量だけではありません、響きです。響きのない音は音が薄く、平べったく聞こえたり、客席まで届きにくくなります。
しかし、わざと響きを無くそうと思って吹いている人はいないと思います。響きがなくなってしまっているのは、「もっと大きく吹こう」と間違った方向に頑張ったり、いい音を出そうとした結果だったりします。
指揮者に届く音はむしろ「そば鳴り」かも
吹奏楽やオーケストラの場合、合奏中は指揮者の指示に従って演奏します。特に吹奏楽では指揮者との距離が非常に近くなることがあります。
「そば鳴り(近鳴り)・遠鳴り」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?遠くまで届く音ほど、近くでは聞こえないということが実際に起こります。特にフルートの場合、良く鳴っている時ほど、合奏中に自分の近くで聞こえている音は「シャーッ」という空気音だけだったりします。
指揮者に「もっと大きく!」などと言われて、指揮者までしか届かない音で吹いてしまって、肝心の客席まで音が届いていないのでは意味がありません。指揮者に届く音ではなく、客席に届く音はどんな音なのかを常に意識したいですね。
「もっと届く音に!」に変換する
さて、もし「聞こえない!もっと吹いて!」と言われてしまった場合、まずは「もっと届く音に変えてほしい」と言われているのだと脳内変換してください。
そのためには、ある程度の音量はさることながら響きが必要です。音量にしても響きにしても、もっと増すには十分な息が必要です。しかし、闇雲にただ息の量を増やすだけでは響きになってくれません。深い呼吸を意識することと同時に、息を「上手く使う」ことが大切なのです。
より届く音にするために
それでは、より届く音にするためにできることをまとめていきます。
息をたくさん使えるようにする
まず音量にしても響きにしても、音の素になるのは「息」です。豊かな響きを生み出すには、息が十分に使えるようにする必要があります。
息が吸えないと悩んでいる方は、こちらの記事を参考になさってください。

呼吸時の無駄な動き・力みをなくす

そして息を吸った時の自分のモーションも観察してみましょう。アインザッツを出そうとするあまり、上体を後ろへ反りすぎると身体に力が入り、呼吸を妨げます。
また、楽器を操作する指から腕、肩までの力みも観察します。腕は肩の先からではなく、鎖骨から始まっています。鎖骨は胸骨に繋がっているので、腕にぐっと力が入ってしまうと呼吸にも影響します。
呼吸のしやすい姿勢を確保する

吹奏楽やオーケストラでは座奏となるため、椅子との相性によって呼吸のしやすさが左右されることもあります。
パイプ椅子などでは座面が前傾・後傾していることもありますし、長時間座ることを想定した深く座る用の椅子、座面がふかふかな椅子など、演奏に適さない椅子に当たってしまうこともあります。
坐骨で座面を捉えにくい椅子に座ると、身体のバランスを取ろうとして余計に体幹の筋肉を使うことになり、呼吸時の力を抜きたいタイミングで抜けなかったり、体幹で身体を支えにくくなったりします。
この場合は坐骨の下にクロスを敷いたり、持っているスコアやノートを敷いたりすることで、演奏のしにくさが改善されることがあります。
レッスン中、ノート一冊を敷いただけで音が変わった、ということは珍しくありません。
響きを妨げているものをなくす
響きの素は息なので、まずは上記の呼吸の改善に取り組んでみましょう。ここではさらに響きを増すためのポイントをお話しします。
歌口の外へ出る息を意識する
フルートの歌口のエッジでは、呼気が2分されるとよく言われます。本当に半分ずつか?ということは置いておいて、歌口の中に入る息も、出ていく息も大切です。
私の感覚ですが、入っていく息が多すぎると音の芯の部分ばかりになり、響きがなくなるように思います。息を「半分入れる」と思うのではなく、「半分逃す」の方を意識してみましょう。
また、歌口が塞がりすぎているのも響きが減る原因です。歌口は少なくとも半分以上は開けるようにしましょう(私は2/3開けることをお勧めしています)。
これらを楽に実現できる頭部管の角度を探していくと良いと思います。
息のスピードまで上げない
フルートがすんなり響く時の息は、意外にゆっくりです。「もっと鳴らそう」と思うあまり、息の量と共にスピードまで上がってしまう人は多いです。
息のスピードが速すぎると、息が音に変わる前にひたすら逃げていくだけになってしまいます。そうすると音は荒れて、息も浪費するので苦しいです。
普段から、自分のフルートが最もよく響く息を探しておきましょう。そして息の量を増やしても、スピードは変えないということを意識してみてください。
息の量を増やすと同時に、唇の緊張は減らしアパチュアが広がるようにし、口の中の空間も広く感じるようにします。
唇で音を作るのをやめる
フルートは息そのものがリードの役割をして音を出す楽器のため、どうしても唇に重積を担わせがちですが、唇は息の最終到達地点でしかありません。
音が思うように鳴らない、響かないのは、唇が余計な仕事をしようとして妨げになっていることもかなりあります。特に音量や響きを増したいとき、唇は最大限フリーであるべきです。
唇をフリーにしたまま音を出すには、きちんと息が出ていて上手く使えていることが前提になりますので、ぜひ呼吸そのものに意識向け、唇のことを忘れて演奏しましょう。
まとめ:響きを止めているものはないか?
「もっと吹いて!」と言われると、つい「もっと息を使わなくちゃ」と思ってしまいます。しかし頑張って息を増やすだけでは、音が遠くまで届くどころか、むしろ力んでしまって、響きがなくなったり、息のスピードが上がりすぎたり、唇に余計な力が入ったりすることもあります。
大切なのは、ただ大きな音を出すことではなく、遠くまで届く響きのある音を作ることです。そのためには、まず十分な息が使える状態を作ること。そして、呼吸を邪魔する姿勢や力みがないかを見直すこと。
さらに、頭部管の角度や歌口の開き、息の使い方などを調整しながら、自分の楽器が一番よく響くポイントを探していきます。
「もっと吹いて!」と言われた時こそ、ただ頑張るのではなく、「今の音は、何が足りなくて届いていないんだろう?何が邪魔しているんだろう?」と考えてみてください。
音量を増やすことだけが、音を遠くまで届ける方法ではありません。響きを止めているものを一つずつ取り除いていく。その方が、フルートはずっと楽に遠くまで鳴ってくれるはずです。
今日試してほしいこと

いつもの音でロングトーンをしてみてください。まずは「もっと遠くへ飛ばそう」とせず、フルートが一番よく響く息を探します。そこから息の量だけを少しずつ増やしてみましょう。
ポイントは、息の量を増やしても、息のスピードまで上げないこと。「飛ばす」のではなく、「響きを空気に伝える」。そんな感覚で吹いてみてください。
「もっと吹いて!」と言われた時にも、まずはこの感覚を思い出してみましょう。

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