フルートを構えて、リッププレートを下唇に当てる。でも、いざ吹いてみると思ったような音が出ない。「少し位置が違ったかな?」と思って当て直してみるけれど、やっぱりうまくいかない。そんな経験はありませんか?
でも、レッスンで生徒さんの演奏を観察していると、リッププレートの位置を全く変えていないのに、音が出るようになることがあります。ということは、音が出ない原因は本当に「当てる位置」なのでしょうか?
私も以前は、良い音が出るリッププレートの位置を探して、何度も何度も当て直していました。今回は、私自身の経験と実際のレッスンでの出来事をもとに、リッププレートの位置にこだわりすぎず、安定して音を出すための考え方と練習方法をお話しします。
- リッププレートの位置を変えていないのに、音が変わる理由
- 良い音が出ないとき、当てる位置より先に確認したいこと
- 吹き始めの音を安定させるための練習方法
リッププレートの位置が安定しない?
「サッと当てて吹ける人」が羨ましい

フルートは音を出す原理が大変原始的かつ自由度が高いため、一体どうしたら良い音が出るのか分からない、という方も少なくありません。
穴に息を吹き込む?息を外にも逃す?歌口をどれくらい塞ぐ?リッププレートの角度は?位置は?
サッと下顎に楽器をセットして吹ける人もいれば、10秒かけてリッププレートを慎重に当てても思い通りに吹けない、という人もいます。何を隠そう、私は後者でした。
過去の私のように、「サッと当てて吹けない人」が思うことは、「どうしたらいつも良い音が出る位置に『安定』して当てることができるだろうか」だったり、「なんであの人はサッと当ててすぐ吹けるんだろう?」「なんで自分はできないんだろう」ということです。
そして、より「安定させよう」と鏡とにらめっこしたり、当てるプロセスを変えてみたりと試行錯誤をします。
「安定」しないから曲の最初の音を失敗する…?
さて、曲の吹き始めは特に緊張しますよね。最初の音がちゃんと出るかどうかが不安という声は多いです。
そしてそんな人が、最初の音が上手くいかない時に真っ先に疑うのが「『安定』しないリッププレートの位置」です。
ちゃんと音が出なかったら、またこう思います…「やっぱりこの位置じゃだめだった」と。
ですが、この問題を克服して分かったことがあります。いつも同じように吹けないのは、必ずしもリッププレートの位置のせいだけではなかった、ということです。
吹き始めが上手くいかない、本当の理由
とあるレッスンでの出来事です。
ある方は「吹き始めが怖い」ということをおっしゃっていて、実際にその日にやっていた曲の冒頭が思うように吹けていませんでした。なので曲を進めるのは一旦やめて、第一音目だけを練習することに。
一音目だけを、テンポの中でブレスをしてから吹く練習をしてもらうと、やはりスムーズに音が出ない。
いつもはそこで「やっぱり歌口の場所が良くないのかも」とご本人が楽器を当て直してしまうのですが、あえてこの時は位置を変えないでもらったのです。
そのままリッププレートの位置は変えないで、何度か同じ練習__1音目だけを吹く練習を続けてもらいました。すると、回を重ねているうちに音が出るようになってきたのです。
リッププレートを動かしていないのに音が変わったということは、少なくとも「位置だけが原因ではなかった」ということです。私は、そのとき呼吸や息の使い方が少しずつ変わっていったのではないかと考えています。
「当てる位置」が安定しないせいで音が定まらないのだと思って、それ以外の要素にあまり意識が向かなかったことが、なかなかいつも良い音が出ない原因だったのかもしれません。
「当てる位置」を疑う前に試してほしいこと
「安定」を求めることで、真の原因を見失っていた

過去の記事でも、私自身リッププレートをどこに当てるかでさんざん悩んだことを書いています。当時は音がうまく出せないのを、「アンブシュア」や「リッププレートの位置」のせいにしていました。
しかし「息で吹く」という感覚がつかめた時、「アンブシュア」や「位置」のせいじゃなかったんだと初めて気がつきました。それまでアンブシュアやリッププレートの位置を固めて、「安定」させることばかりを考えていましたが、私にとってはそれがそもそもの間違いだったのです。
「位置」を変えずに、「息」を変えてみる
前述した生徒さんのレッスンの時、だんだん音が出るようになったのは、回数吹いているうちに、その音に必要な息の状態に近づいたのだと思います。再現すべきだったのは、音が出た時のリッププレートの位置ではなくて、この「息」の方なのです。
この時、またリッププレートの位置を探り直していたら、このことに気づくきっかけを逃していたかもしれません。
もし今、練習課題や曲の第1音目でつまづきやすく、その度にリッププレートの位置を疑って直すのが習慣になっているのであれば…リッププレートを当て直したくなるのをぐっとこらえてみてください。
そしてそのままの位置で、何とかその音が出せないか試してみてください。ただしその時に気をつけていただきたいことがいくつかあります。
- アンブシュアで音を出そうとしない
- 力を込めてタンギングしない
- キィを強く叩かない・押さえ込まない
…これらを頑張っても、良い音はやってきません。
その代わり、まずは「アンブシュアよりも先に息を用意すること」を意識してみましょう。
そして、今の息よりも少し長めにしてみたり(歌口のエッジを通過していくように)、今の息が速すぎないか・遅すぎないかにも注意してみましょう。
まとめ
リッププレートの位置が安定しないという悩みは、フルートを始めたばかりの方だけのものではありません。私自身、このことで悩んでいたのは大学で専門的にフルートを勉強していた頃でした。
長く吹いていても、音が出ないたびに「当てる位置が悪かったのかな」と考えてしまうことがあります。でも、位置を変えなくても音が変わることはあります。
吹き始めの音がうまく出なかった時には、すぐにリッププレートを当て直すのではなく、まずそのままの位置で、息の使い方を変えてみてください。
もちろん、当てる位置や角度が原因になることもあります。ただ、そこばかりを疑っていると、ほかの原因を見逃してしまうかもしれません。
私が本当に安定させる必要があったのは、リッププレートの位置よりも「息」でした。次に音が出なかった時、当て直す前にもう一度だけ、同じ位置で吹いてみてください。いつもとは違う発見があるかもしれません。
こちらの記事にも、この問題についてのもう少し根本的なことをまとめていますので、参考にしてみてください。

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