私がずっと勘違いしていた…フルートの「B♭チューニング」の話

B♭が合わない。頭部管の抜き具合が毎日違う…

何度チューナーを見てもゼロにならない…

ようやく合ったと思ったら、今度は他の音が合わなくなる…

 吹奏楽部を経験したフルート吹きなら、一度はこのようなことで悩んだことがあると思います。そんな学生の頃の私も、「自分の技術が足りないからだ」と思っていました。でも今は違う考えです。

 実はフルートにとって、B♭は最初から合わせやすい音ではありません。そして場合によっては、自分ではなく楽器の状態が原因のこともあります。今日は、私が長年当たり前だと思っていた「B♭チューニング」についてお話しします。

この記事を読むと…
  • フルートにおける「B♭チューニングのワナ」が分かる
  • フルートにとってB♭が難しい理由がわかる
  • 結局チューニングの時はどうすれば良いのかが分かる
  • 楽器の調整の問題が起きている場合の応急処置ができるようになる
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目次

そもそもフルートのチューニングはB♭ですべき…?

 吹奏楽ではB♭、オーケストラやピアノ合わせではAでチューニングをする。これが世の普通です。私自身は吹奏楽部で6年間ほぼ毎日B♭を吹き続け、大学から初めてオーケストラに参加しAでのチューニングを経験しました。現在の主戦場がオーケストラなので、今はもっぱらAでチューニングしております。

 そうしてしばらくB♭でチューニングする毎日から離れていた私が、仕事で久しぶりに学生に混じってB♭でチューニングをすると、ものすごく難しく感じるのです…。この違和感をきっかけに、フルート奏者目線で「B♭チューニング」というものに対する常識を疑ってみることにしました。

 オーケストラでのAチューニングは、あまりやりにくいと思ったことがなく、少なくともB♭で他の楽器に合わせるよりも私は合わせやすいと感じています。少なくともB♭よりはAの方が、フルートのチューニングには向いていると思うのです。その理由を次のセクションでご説明します。

ちなみに吹奏楽のチューニングでB♭を使用することを否定しているわけではありません。その方が♭系の移調楽器が多い吹奏楽においては合理性があるからです。ただし、フルートのチューニングという観点では向いていないのでは、というお話です。

フルートにとってB♭は難しい音である

 Aチューニングの方がしっくりくる、その理由はなんなのかを私なりに考えてみて、フルートにとってそもそも第2オクターブのB♭というものが難しい音である、という結論に至りました。その理由を二点挙げます。

吹き方や調子によってピッチが変わりやすい

 木管楽器にとって、開放(指を全て離す)の運指で鳴らす音は、音が開きやすかったり、吹き方によって音質に差が出やすく、同時にピッチの振れ幅も大きくなりがちです。フルートでは第2オクターブのCis(♯ド)がその最たる例です。

 B♭はどうかというと、実は結構開放に近い運指です。つまり、比較的吹き方によって振れ幅がある音と言えます。調子が良ければある程度コントロールできますが、調子が悪い時にはとことん安定しない…そんな経験がある方もいらっしゃるはずです。

 なのでかなり確信を持って吹かないと、B♭を狙ったピッチで吹くことは出来ません。吹奏楽部で毎日B♭を吹き続けていると、「チューナのゼロに合う吹き方」みたいなものが固まってきて、どんな状況でもチューニングだけは合わせられるという謎の技術を身につけがちですが(当時の私)、音質を犠牲にして無理して合わせても良い音では演奏できません

調整が狂いやすい

 そして理由の2つ目としては、キィの調整が狂いやすいということが挙げられます。写真で説明しておりますが、正規の運指の場合、右手人差し指のFキィを押さえた時に、左手人差し指と中指の間のB♭キィが連動します。実は気付かぬうちにこの連動がうまく行かなくなっていることが多々あります。そして本人が気づいていないケースが意外と多いです。

 B♭キィがきちんと閉じていない、ということは、そこから息が漏れてしまっているということであり、その影響でピッチが上がりがちになり、音色も悪くなってしまいます。

 しかし、吹奏楽においてB♭はあまりにも重視されるし、なんならチューナーをつけて最初に吹くことが多いため、自分の調子のせいにしてしまい、楽器の不具合に気づかない方が非常に多いのです。

 もしこの不具合に気づかないまま、ちょっとB♭が高いから頭部管を抜いておこう…と抜いてしまった日には、B♭だけは合っていて他の音が全部下がるという、大変恐ろしい状況になってしまいます。

 明らかにB♭キィに隙間が空いているようであれば、この後ご紹介する応急処置をして、タイミングがあればメンテナンスに出しましょう。

対策:今日からB♭チューニングをやめてみましょう

 ここまでで、「フルートにとってB♭は難しい音である」ということをお話しました。その不安定かつ自分や楽器の調子によってもピッチや音質が変化しやすいB♭でチューニングをする…フルート吹きにとって、これが実はなかなかの苦行だったのです。

 では今日からどうするか。

 自分でチューニングをする際に、最初にB♭で合わせるのをやめてみましょう。おすすめはGかA。どちらもチェックしてみるのがおすすめです。

おすすめのチューニング手順と注意点

STEP
楽器がある程度温まっている状態で、G・Aを吹く

この時、チューナーのゼロに合わせることは目的ではありません。自分のいつも通りの息で、楽器が響いているかどうかを確認します。

STEP
G・Aをチューナーでチェックして、必要であれば頭部管の抜き具合を調整

良い響きで吹けている前提で、高ければ少し(1mm程度)頭部管を抜き、低ければ少し(1mm程度)頭部管を入れます。

現在のフルートは、5〜7mm程度抜いた状態で442Hz(ヘルツ)のAが出るように設計されています。よほど寒い・暑い、もしくは何か意図がない限りは、これよりも極端に抜いたり入れたりしないようにしましょう。抜きすぎ・入れすぎは音程が狂う原因になりますし、その状態でないとピッチが合わないのは吹き方や頭部管の内部にあるコルク・反射板の状態が要因となっている可能性が高いです。

実は頭部管の抜き具合は、奏法が安定してくれば毎日頻繁に変えなくても合うようになります。筆者は年間を通じて毎日ほぼ同じです。

STEP
吹き方を変えずにB♭を吹いて、チューナーでピッチのクセをチェックする

比較的安定しているGやAでチューニングをしたら、B♭もチューナーでチェックします。ここで大切なのは無理に合わせようとしないこと。まず普通に吹いた時に上がりやすいのか、下がりやすいのか、同じくチューナーのゼロ辺りになるのか、自分のクセをチェックします。

このクセを知った上で、バンド全体でのチューニング・合奏にのぞみましょう。合奏の中で吹く時には、必ず周りの音をよく聞いて「馴染みやすい居所」を探すようにします(その時チューナーのゼロより多少高くても、居心地が悪くなければOK)。

もし極端に下がる場合は、B♭だけ吹き方を変えてしまっていないか(変に意識していないか)をチェックします。

逆に上がってしまう場合、まずは息を使いすぎていないかを確認しましょう。また楽器の調整が合っていないことも疑います。次のセクションを参考にしてチェックしましょう。

調整が狂っている時の応急処置

 AやGはチューニングが合っていて、Hも特に問題なく、B♭だけが吹きにくい・ピッチが上がってしまう場合は、B♭キィが完全に閉じていない可能性があります。以下のようにチェックをして、必要であれば応急処置をしてみましょう。

 調整不良でB♭の鳴りが悪くなっているのに、自分のせいだと勘違いして、必要以上にアンブシュアや息を調整してしまうと、自分の調子も悪くなってしまいます。B♭は非常によく使うため、影響が大きいです。「あれ?」と思った時に、自分でチェック・対処できるようにしましょう。

B♭キィのチェックの仕方

 右手の人差し指のキィを「軽く」押さえ、左手人差し指と中指の間にあるB♭キィを観察します。この状態で軽くB♭キィを触ってみて、少しでも遊びがあるようだと、ここから息が漏れている可能性が高いです。また、この時点で隙間が目視できるくらいですとかなり重症です…。すぐ応急処置をするか、メンテナンスへ。

B♭キィの調整の仕方

<用意するもの>

  • 薄い付箋紙(←オススメ)またはクリーニングペーパー(脂取り紙でもOK)
  • ピンセット(無くてもOK)
  • ハサミ(緊急時、見かけを気にしないのであれば手でちぎってもOK)
STEP
付箋紙やペーパーを小さく切る(ちぎっても良い)

付箋にはあらかじめ糊がついているので、薄いものがあればオススメ(私は仕事柄ポーチに入れています)。クリーニングペーパー等でも良いですが、こちらは吹いているうちに落ちて無くなりやすいです…あくまでメンテナンスに出すまでの応急処置なので、接着剤を使うのはおすすめしません。

STEP
Gis(ギス)キィの右側にあるメカニックを確認

左手の小指のGis(ギス)レバーを使うと開く、反対側のキィがGis(ギス)キィです。このすぐ右横に、B♭に関わるメカニックがついています。

左手人差し指と中指の間にあるB♭キィ・もしくはこの後紹介するAis(アイス)レバーを触ると、このメカニックの一部が持ち上がります。その下には(メーカーによっては持ち上がったメカニックの裏側に)フェルトが貼られているはずなのですが、このフェルトが摩耗したり縮んだりすると(その他タンポの縮みなど)、B♭キィがきちんと閉じなくなってしまうのです。

STEP
メカニックのフェルトの上に、1で用意した紙を挟む

左手人差し指と中指の間にあるB♭キィ・もしくはこの後紹介するAis(アイス)レバーを触って、写真のようにメカニックの一部を持ち上げたら、フェルトとメカニックの間に紙を置きます。まずは一番薄い状態から試してみて、B♭キィの閉じ具合をチェックします。まだ隙間があるようであれば、紙を足してみます。吹いてみて、B♭の音が改善し、他の音が出なくなったりしてないかも確認しましょう。

フェルトの上に置く紙が厚すぎると、楽器の他の部分に負担をかけてしまいます。必ず薄い紙1枚から試すようにしてください。なかなか改善しない場合はメンテナンスへ出しましょう。

ブリチアルディキィの調子が悪い場合はAis(アイス)レバーも活用

 右手の人差し指を使う運指でB♭がきちんと出たら、左手の親指をブリチアルディキィに置いた時にもB♭キィがピタッと閉じているかどうか確認しましょう。

 もし閉じていない場合、こちらも応急手当てできなくはありませんが、先ほどよりは難易度が上がるため、ひとまず右手人差し指を使う運指で対応するか、Ais(アイス)レバーも活用してみましょう。

 え、なにそれ?という方は、写真を参照してください。何年か吹いている方でも知らないこともある、認知度の低いキィですが…実は大変便利なキィです。右手の人差し指のFキィを使わない限りは、ブリチアルディキィの代わりとして機能してくれます。Aisレバーという名前から分かるように、♯ラとして楽譜に出てくる時に活躍することが多いです。

 B♭キィに直接作用するレバーなので、確実にB♭が鳴ります。前後の運指との兼ね合いでは使えないこともありますが、緊急時のためにも覚えておいて損はありません。

AisレバーはB♭キィに直接作用するので、強く押さえてしまうと楽器に良くありません。使用する場合はあくまで軽く触るようにしましょう。

まとめ

 実はフルートにとってB♭でチューニングすることは難しいことだったのです。コンディションが安定しにくく合わせにくい…にも関わらず、真面目な人ほど自分のせいにしてしまいがちです。

 いきなりB♭でチューナーと睨めっこするのは今日からやめにして、安定している音でチューニングをし、「自分のB♭のクセ」を知りましょう。

 そして調整不良も疑いましょう。自分の楽器の状態をきちんとチェックし、必要であれば応急処置もする…楽器のことを知って自分でも対処できるようにしておくことは、今後フルートを吹く上でとても大切なことです。

 B♭チューニングは確かに難しいですが、「いつもの自分」を吹きやすい音で確認しておくことで、不必要に自分を責めなくて済むようになります。ぜひ参考にしてください!

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